トルクステアはほぼ皆無、シャシー完成度の高さが光る
ただし、パワーを上げれば、それに見合ったシャシー性能も必要になる。そこでスーパーワンでは、オーバーフェンダーによってトレッドを拡大し、走行安定性を高めている。さらにフロントサスペンションのロアアームにアルミ鋳造製を採用し、左右のドライブシャフトも剛性を最適化してFF高出力車で発生しやすいトルクステアを抑えている。
実際にアクセルを強く踏み込んでも、ハンドルを左右に取られるようなトルクステアはほとんど感じられない。これがブルドッグとの決定的な違いだ。ブルドッグはパワーに対してシャシーが追いついていない部分があり、そのアンバランスさがじゃじゃ馬的な魅力につながっていた。
スーパーワンは逆だ。パワーを受け止めるためのシャシー、タイヤ、サスペンション、ボディ剛性などがきちんと整えられている。モーターとバッテリーを低い位置に搭載することで低重心化されていることもあり、ワインディングや荒れた舗装路を走っても、路面から入力された振動の収束が非常に良い。
軽自動車をベースにしたEVだからといって、軽自動車らしい乗り味を想像して乗ると質感の高さに驚かされるだろう。通常走行では最高出力47kWの制御に抑えられている。そのため街中では非常に扱いやすい。アクセルを踏み込んだときのトルクの立ち上がりも穏やかで、発進から速度を乗せていく過程も自然だ。これなら日常の足として使っても扱いにくさを感じることはない。
ウワサの仮想7速&エンジンサウンドが面白い!!
ドライブモードにはECON、NORMAL、CITY、SPORTが用意されている。ECONでは出力特性を穏やかにして航続距離を重視し、CITYではアクセルオフ時の回生を強めることで、ワンペダルに近い感覚で走ることができる。
そしてSPORTにすると、このクルマは一気に「遊び」の領域へ入っていく。室内には仮想的なエンジンサウンドが響き、7速をイメージした変速制御も行われる。ステアリングにはパドルシフトも備わり、左右のパドルを操作することでシフトアップ、シフトダウンを演出する。メーターには仮想的なエンジン回転計なども表示される。
さらにステアリング上のブーストボタンを押せば、最高出力が70kWまで引き上げられる。これが実に面白い。BEVなのだから本来はシームレスにトルクが立ち上がっていけばいい。しかし、あえて仮想的な変速やエンジンサウンドを組み合わせることで運転する楽しさを演出している。
しかも、その味付けはホンダらしい高回転型エンジンというより大排気量V8エンジンを思わせる低中速トルク型だ。アクセルを踏み込むと低音の効いたサウンドが室内に響き、変速による加速感の変化も加わる。実際の速度以上にクルマを操っているという感覚を強く感じさせてくれる。
こうした演出を人工的だと感じる人もいるだろう。しかし、これはBEV時代におけるひとつの解だと思う。電気自動車は、エンジン車とは異なり音や振動、変速といった要素が少ない。静かでスムーズなのは大きなメリットだが、運転する楽しさという点では物足りなさを感じる人もいる。スーパーワンは、そこを電子制御による遊びで補っているのだ。



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