「誰でも楽しめる」も人間中心! ホンダの思想はひとつじゃない
試乗後、ホンダの技術者に聞いてみると、やはりシビックは「誰でも運転できる」ことを意識して開発されているようだ。たとえば、その工夫としてよく挙がるのが視認性の良さである。フロントピラーの後退により、左右方向の前方視界も拡大したが、そうしたデザインもまた「人間中心」思想によるものだとのこと。
シビックは半ば伝説化してしまっている部分も否めないが、もともとは名前の通り市民が使うクルマであり、そのコンセプトは50年以上経っても守られている。
だが、この「人間中心」の思想はそれだけに止まらない。たとえばN-ONE e:の時は、充電口をどこにするかどうかで激しい議論が展開されたそうだ。結果的に使いやすさの観点からフロントにするという方向で落ち着いたが、このエピソードからわかるのは、ホンダの「人間中心」思想とはなにも室内の広さを代表とするM・M思想(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)に限られていないということだ。
シビックでは運転の楽しさ、誰でも乗れるという意味での「人間中心」思想が入る一方で、N-ONE e:のように、クルマによってあるいは部位によって、さまざまな「人間中心」思想が込められている。ホンダの「人間中心」の思想とは「クルマづくりは、こうあらねばならない」というたった1つの定義ではなく、複数かつ多岐に渡っているようだ。
そもそもシビックは大気汚染防止のためにアメリカで制定されたマスキー法を突破するために1972年に登場した。冒頭でも述べた、2代目シビックハイブリッドは「エコにもパワーを。」を掲げ、ハイブリッドとしての走る楽しさを掲げていた。
当時のハイブリッドシステムと現在のe:HEVは厳密には異なる。しかし、環境に配慮しながらクルマで走る楽しさ、クルマを操る喜びといった部分をシビックe:HEV、シビックe:HEV RSに与えられたのはある意味で正統進化だとも言える。
「ハイブリッドタイプR」はあり得るか

会場には2つのハイブリッドシステムが展示されていたが、片方はシビックにも積まれ、走行用モーターと発電用モーターを同じ軸に設置している「同軸配置」タイプで、もう片方はその二つのモーターを並行軸に変更した「並行軸配置」タイプだ。
この「並行軸配置」タイプは、アコードやCR-Vに搭載され、CR-Vではホンダのハイブリッドとして初のエンジン直結のハイ/ロー2段ギアを持たせることを実現した。
2026年5月に展示されたセダンとSUVの新型ハイブリッド車を2車種に搭載されるのはこのハイブリッドシステムを発展/向上させたものであることが予想される。
さて、シビックといえばもう一つ忘れてはいけないのがタイプRの存在だ。もし、次世代のシビックからガソリンモデルが消えるのであれば、そのタイプRはどんなものになるだろうか。現場にいたホンダの技術者に「ハイブリッドタイプRはありえますか?」と尋ねみた。
ホンダの技術者はニヤリと笑いながら、次のように答える。「逆にどんなハイブリッドタイプRが欲しいですか?」。まさかの質問返しをくらってしまったが、ホンダファンのみならず、クルマ好きならこの質問にどう答えるだろうか。
投げかけられたこの問いをあえて好意的に解釈するのであれば、ホンダはハイブリッドになってもどうやらワクワクさせるクルマを提供する意志があるようだ。
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