現在の日本では、MT(マニュアルトランスミッション)車が半絶滅状態にあるといえる。どうしてMTはそんなに減ってしまったのか、今回はMT車が減った理由を考察し、諸外国の事情も見ながらMT車の今後を展望したい。
文:長谷川 敦/写真:スズキ、スバル、ダイハツ、トヨタ、日産、フォルクスワーゲン、ホンダ、写真AC
【画像ギャラリー】MT車は気づけばスポーツカーばかり!?(14枚)画像ギャラリー現代日本ではどのくらいMT車が走っているのか?
やや古いデータではあるが、2019年の日本自動車販売協会連合会による統計では、同年の乗用登録車販売に占めるMT車の割合は1.4%とのこと。
この数字を見ると少々驚くが、実際に自分自身や周囲にMT車に乗っている人間がほとんどいないことを考えると納得できる。
国産のAT(オートマチックトランスミッション)車が登場したのが1959年、トヨタ製の2速セミATのトヨグライドが商用車のマスターラインやクラウンに搭載された。
当時のATは高価であり、その普及は高級車から始まったが、技術の進歩とともに低コスト化も進み、1980年代半ばには国内でのAT車率が50%近くに増えている。
そしていまや、新車販売の98%以上がAT車という状況になっているわけだ。
AT車の隆興は当然ながらMT車の減少につながる。
AT車最大のメリットは運転が簡単になることであり、MT車を操るうえでキモになる手でのシフトレバー操作と左足のクラッチ操作を連動させる必要がない。
また、頻繁に停止と発進を繰り返す渋滞中でもMT車に比べて格段にラク。
問題だったコストも十分に下がっていき、さらに1991年に普通自動車AT限定免許制度が施行されたことも後押しになって現在のAT全盛時代になった。
欧州に比べて日本のMT車率が低い理由
ATはアメリカで開発され、発展してきたシステムだが、欧州では現在でもかなりの数のMT車が走っている。
これには、市街地を除き、中~高速で巡航するケースが多い道路事情(=ギアチェンジの頻度が低い)であることに加え、クルマの運転に対する意識の違いもある。
欧州では、ハンドルやペダルの操作、そしてマニュアルでの変速をすべて含めてクルマの運転ととらえる傾向が強く、AT車の運転をそもそも考慮していない人もいる。
とはいえ近年は欧州でもAT車の占有率が上がっていて、それはEV(電気自動車)の普及にも関連している。
内燃エンジンに比べて電動モーターは最大トルクの発生幅が広く、変速機構を必要としていないモデルもある。
その場合はマニュアルでの変速操作は不要になり、これがATのシェア拡大にも影響している。
また、欧州メーカーもAT率の高いアジアやアメリカ向けにAT車を製造するため、これが結果的にコストを下げて欧州のユーザーもAT車を購入しやすくなったことも考えられる。
しかし我が国では、まずは渋滞が多くなりやすい道路事情を考慮してMTを避ける傾向が強く、利便性を重視するという国民性もAT車を選ぶ理由になっているようだ。
また、欧州では循環型の交差点・ラウンドアバウトが多いのに対し、日本の交差点は赤信号で停止することによって交差するクルマを通行させる。
それに対して、通行するクルマの数が極端に多くなければ、ラウンドアバウト内では停止する必要がなく、当然ギアチェンジもほとんど行わない。
これもまた、欧州でMT車の率が高い要因といわれる。
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