先日お披露目されたマイチェンモデルのレクサスISは、従来よりさらに大きなスピンドルグリルを得ていた。
「顔」として冷静に観察すれば、もはや顔の面積の55%(推定)は口である。もーれつア太郎よりデカ口だ。
初めてレクサスGSにスピンドルグリルが採用された時は、かなり多くの人が違和感を抱いたが、現在はほとんどの人が慣れている。今度のISのデカ口も、まったく自然に受け入れられている。なぜなのだろう?
今回は、「アクが強いのに見慣れる&見慣れないデザインの不思議」というテーマで、4台の自動車デザインを例に考察してみたい。
文:清水草一
写真:トヨタ、レクサス、アウディ、BMW、MINI、VW、テスラ、アルファロメロ、フェラーリ、フィアット、プジョー、メルセデスベンツ、ランボルギーニ、ルノー
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アウディ(シングルフレームグリル)
レクサスのスピンドルグリルのような現代のデカ口は、アウディのシングルフレームグリルから始まっている。
シングルフレームグリルは、2006年発表のA6が最初で、現在はアウディの全モデルに導入されており、その影響は全世界の自動車メーカーに及んでいる。実に巨大なインパクトだった。
それまでのアウディは、端正かつ衛生的なデザインをウリにしてきたが、シングルフレームグリルによって、威圧感を大幅に高めることに成功した。アウディによれば、「機能性を損なうことなく、よりシンプルに、しかもアウディとひと目でわかるようシンボリックにデザイン」であるという。
当初は「品がない」、「口が大きすぎてヘンだ」という反応もあったが、ここまで受け入れられたのはなぜなのか。
第一に、「デカ口」は基本的には原点回帰のデザインであることが挙げられる。
昔のクルマはエンジン冷却のために、今よりはるかにデカい口(開口部)が必要だった。アウディのシングルフレームグリルも、原点は戦前のアウトウニオン(アウディの前身)のレーシングカー「タイプC」だという。まったく似ても似つきませんけど、口がデカいという点だけは共通している。
現在のクルマには、昔のようなデカい開口部は必要ないが、過去は必要だったし、それが普通だった。つまり、それだけ目が慣れやすい。
加えてデカい開口部は、「たくさん空気を吸い込む→それだけパワーが出る」という、ポジティブな連想を引き起こす。口をデカく開けて叫んでいるようなイメージは、元気がいい、望ましい威圧感も生む。
開口部が大きすぎると空気抵抗も大きくなってしまうが、現代のデカ口は、実際の開口部ははるかに小さく、大部分が閉じているので、機能的にも問題はない。ある意味、「いいことずくめ」なのである! だからここまで世界を席巻しているのだ。
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