新型ノートいきなり全車電動化! 日産得意のe-POWERで市場を埋め尽くす作戦!!

■燃費の向上以外にも寄与する電動化技術

 リーフを持つ日産が、トヨタと異なるハイブリッドシステムを採用することは理にかなっている。そして、モーターのみで走行するシリーズ式ハイブリッドとすることにより、燃費の向上だけでなく、ほかの機能も充実させることができるのである。

 象徴的なのが、アクセルペダルだけで発進~加速~減速~停止ができる、「ワンペダル操作」だ。モーターは、減速の際に回生といって磁力の抵抗を利用した減速力を得ることができる。エンジンブレーキのような機能だが、発電制御を行うことでゆっくりとした減速も、急減速も、状況に応じて思いのままになる。

 日常的には、アクセルペダルをゆっくり戻せば、交差点の停止線などにピタリとクルマを止めることができる。慣れは必要だが、数回試せばかなりの精度で停止線に止められる。もし、減速が足りなければブレーキペダルを踏めばいいし、手前で止まってしまいそうになったら、そのままアクセルペダルを少し踏めば停止線まで前進できる。そしてペダルを戻せば止まるのだ。

 日産によれば、ワンペダルでの運転に慣れると、アクセルとブレーキのペダル踏み替えを7割ほど減らせられるという。慣れれば、9割近く減らせられるという人もいる。実際、ホンダ『ホンダe』の開発者も、ほとんどブレーキを踏まずに運転するようになったと話す。

 これは、近年注目を集める高齢者によるペダル踏み間違いの予防に役立つ。

 そのほか、アクセルペダルを急に戻すと、強い回生が働き、急減速する。万一の衝突の危険が迫った時、パッとアクセルペダルを戻せば、ブレーキペダルへ踏み替える前に減速がはじまる。たとえば時速20kmというような徐行中でも、ペダル踏み替えの空走時間1秒前後で5m以上前へ進んでしまう。

 エンジン車のようにそのまま前へ走ってしまうか、回生で減速をはじめるかで衝突回避ができるかどうかに差が出るだろう。人間の心理としても、グッと減速が働けば、そこで気持ちが少し落ち着いて、的確にブレーキペダルへの踏み替えができるのではないか。

 モーター特有の回生の働きは、安全運転や事故回避にも一役買うのである。

 モーター走行には、さらにエンジンと違う利点がある。それは運転支援での出力調整だ。モーターは、エンジンに比べ1/100の速さで回転を制御することができる。したがって、ACC(前車追従機能付きクルーズコントロール)の速度調整を素早く、適切に行えるので、加速も減速もより自然に調整される。自動での車線変更の際の加減速も、素早く行える。

 高速道路など自動車専用道路でハンズオフの運転を実現した日産『スカイライン』の「プロパイロット2.0」が、ハイブリッド車にしか搭載できないのも、ハイブリッドならモーター制御でち密な走行を管理できるからだ。

2019年7月にビッグマイナーチェンジを果たした「V37型スカイライン」。このマイナーチェンジで、ハイブリッドモデルに先進運転支援機能「プロパイロット2.0」を搭載した
2019年7月にビッグマイナーチェンジを果たした「V37型スカイライン」。このマイナーチェンジで、ハイブリッドモデルに先進運転支援機能「プロパイロット2.0」を搭載した
「プロパイロット2.0」は、高速道路など自動車専用道路でハンズオフの運転を実現した
「プロパイロット2.0」は、高速道路など自動車専用道路でハンズオフの運転を実現した

 先代のノートe-POWERの4WD車で、北海道の雪道を走ったことがある。滑りやすい路面状況で、ほとんど緊張することなく運転できた。これもモーターをち密に制御することで、タイヤの滑りを抑えた駆動力調整ができるからだ。新雪の積もった場所からの脱出も容易であった。

 こうした数々の利点のあるe-POWERは、前型ノートはもちろん、ミニバンのセレナも販売成績を大幅に向上させることに貢献した。たとえばノートの場合、前型では6割の顧客がe-POWER車を選び、その9割超が満足しているとの調査があると、アシュワ・グプタ最高執行責任者は新型ノート発表会で語った。そして、また乗りたくなるとか、ずっと乗っていたくなるとの声があるという。

 e-POWERの商品性が確立したことにより、キックスからe-POWERは第2世代へ進化した。大きな点は、発電のためのエンジン始動を極力抑え、またエンジンが始動してもあまり気にならないように加速や高速走行時に発電するような改良が施されたのである。これにより、日常的な市街地での運転で巡行している時は、エンジン再始動に気付きにくい。あたかも、充電のいらないEVに乗っているかのようだ。

次ページは : ■今後の電動化戦略の舵をどう取る!? 日産の動向を読む

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