惜別現行型ジムニー!! ジムニーが新型にチェンジする事情、そしてパジェロミニという唯一のライバルをふり返る

■「FRベースの4WD」がパジェロミニとジムニーの共通点

 パジェロミニは、薄利多売の軽自動車に設定されたSUVで、20年以上の実績を持つジムニーの市場に切り込んだから相当なチャレンジであった。

 これを可能にしたのは、当時の三菱に勢いがあったことだ。1990年に初代ディアマンテ、1991年に2代目パジェロ、1992年にはランサーGSRエボリューションなどを発売して話題になり、売れ行きも伸びている。

 1994年の三菱は、小型/普通/軽乗用車だけでも国内で約39万台を販売しており、2017年に比べると4倍以上の売れ行きを誇った。だからこそジムニーの独壇場とされる軽自動車のSUVに挑めたわけだ。

 また当時の三菱はパジェロを筆頭にRVR、ピックアップトラックのストラーダなどの4WDをそろえ、ミニバンのデリカスターワゴンやスペースギアも4WDの採用で走破力を高めた。

 1995年に発売されたコンパクトカーのパジェロジュニアも含めてSUVの品ぞろえを充実させるねらいがあり、パジェロミニもそこに組み込まれた。2代目ジムニーと初代パジェロミニを比べると、共通点と相違点がハッキリしている。

パジェロの意匠を色濃く残したパジェロミニ。オフロードでの性能も高かったが、やはりその分野で突出していたジムニーにかなわないこともあり、オンロード性能も磨き上げた
パジェロの意匠を色濃く残したパジェロミニ。オフロードでの性能も高かったが、やはりその分野で突出していたジムニーにかなわないこともあり、オンロード性能も磨き上げた

 まず共通点は、後輪駆動のシャシーをベースにしたオフロードSUVであることだ。4WDシステムは、カーブを曲がる時に前後輪の回転数を調節するセンターデフなどを備えないパートタイム式だから、舗装路は基本的に後輪駆動の2WDで走る。

 その代わり4WDにした時には前後輪の駆動系が直結されるから、悪路の走破力が高い。ギヤ比をローギヤード化して駆動力を高める副変速機も装着した。

 ボディは両車ともに3ドアで、後輪駆動がベースだから、前輪駆動の乗用車に比べると空間効率は低い。後席と荷室は狭くなる。いっぽう、相違点は足まわりだ。

 1994年時点のジムニーは、前後にリーフスプリングを使うリジッド(車軸式)サスペンションを装着していた(1995年にスプリングをコイルに変更)。それがパジェロミニでは、前輪側はストラットによる独立式で、後輪はリジッドではあるがコイルスプリングを使う5リンクであった。

 足まわりの形式が異なる理由は2つある。まずはコンセプトの違いだ。ジムニーは初代モデルを悪路で使う作業車として1970年に発売したからオフロード指向がきわめて強く、足まわりも4輪にリジッドを採用した。

 これに比べるとパジェロミニは、ジムニーとの競争を避ける意味でも乗用車感覚を強めた。4輪にコイルスプリングを使って前輪は独立式にすることで、走行安定性と乗り心地を向上させている。

■姿を消したライバルとジムニーのこれから

 そのために運転感覚も違う。ジムニーは舗装路が得意ではない。特に先代型は操舵感が曖昧で、カーブではボディが唐突に傾いた。乗り心地は前後方向の揺れが大きい。しかし悪路に乗り入れるとこれらの欠点がすべて美点に変わり、激しいデコボコを軽快に乗り越えていく。この豹変ぶりもジムニーの楽しさだ。

 パジェロミニも専用のシャシーを備えたオフロードモデルだから走破力は高いが、ジムニーほどハードは使われ方は想定していない。後席の広さも含めて、ジムニーに比べると幅広い用途に適する。ジムニーで悪路を走らないと、選んだメリットが実用性では皆無になるが、パジェロミニはそれほどではない。

 660ccエンジンも異なり、ジムニーは直列3気筒ターボだが、パジェロミニは直列4気筒の自然吸気とターボを用意した。車両重量が900kg前後に達するから自然吸気では実用回転域の駆動力が不足したが、ターボならパジェロミニは4気筒とあって加速が滑らかだ。

大きな違いのエンジン。パジェロミニは4気筒を搭載した
大きな違いのエンジン。パジェロミニは4気筒を搭載した

 対するジムニーの3気筒ターボは回転の上昇が活発で、これも悪路を機敏に走る時に都合が良かった。1998年10月には衝突安全性の向上を目的に軽自動車の規格が変更され、全長の上限が100mm拡大されて3400mm、全幅が80mm広がって1480mmになった。

 これに基づいて時速50kmにおける前面/側面衝突時の乗員保護、後面衝突における燃料漏れの防止が義務付けられた。

 この時には16車種の軽自動車がほぼ一斉にフルモデルチェンジを行い、未曾有の新車ラッシュになっている。ジムニーとパジェロミニもこの時に一新された。ジムニーは現行型になり、エンジンは直列3気筒660ccターボを搭載する。

 衝突安全性の向上も視野に入れて、ラダーフレームから新設計されたが、サスペンションは4輪にコイルスプリングを備えるリジッドだ。

 ホイールベース(前輪と後輪の間隔)やトレッド(左右のホイールの間隔)の拡大で走行安定性と乗り心地を向上させたが、悪路指向のクルマ造りに変化はない。

 パジェロミニは直列4気筒エンジンを踏襲。ジムニーと同様にホイールベースとトレッドを広げて、基本部分を小型車のパジェロ・イオと共通化した。ホイールベースも2280mmで等しい。そのために乗り心地が一層快適になり、従来以上に乗用車感覚を強めてジムニーとの違いも明確になった。

 ジムニーは初代モデルの発売から50年近くにわたり、日本に最適な生粋のオフロードSUVとして走り続けている。狭く曲がりくねった林道には、ジムニーのサイズがピッタリだ。

 軽自動車のSUVというより、日本の悪路に最適なクルマを開発したら、それがちょうど軽自動車のサイズに収まった印象を受ける。ジムニーは時間を超越して、日本の悪路と向き合っている。

 対するパジェロミニは、悪路の走破力を含めて機能を総合的に高めた軽自動車のオフロードSUVだ。かつて人気車だったパジェロの軽自動車版でもあり、市場動向に沿って開発されたから、オフロードSUVとパジェロの衰退に伴って姿を消した。

次期型ジムニーはキープコンセプト+初代の意匠へのオマージュも見れる。ラダーフレームも健在とベストカーは情報をつかんでいる
次期型ジムニーはキープコンセプト+初代の意匠へのオマージュも見れる。ラダーフレームも健在とベストカーは情報をつかんでいる

 しかしSUVの人気は、海外を含めて新しい段階に入っている。新しいジムニーとパジェロミニの登場に期待したい。1994年から2010年代の前半にかけて、ジムニーは、パジェロミニとの相対性においても個性を発揮することができた。

 次期型ジムニーは従来の路線を踏襲すると思うが、パジェロミニは(開発すると仮定すれば日産だが)、斬新な軽SUVの提案をしてくれるだろう。

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