最近クルマのフロントマスクの「ド派手化」が、めちゃくちゃ進んでいると思いませんか。いや前々から派手だなぁとは思っていましたが、なんというか「タガが外れてないか」と思うわけです。「ブームでしょ」と片付けられないくらい。
これ、なにか理由があるんでしょうか。単なるブームに片付けられない事情がある気がするし、このブームに終わりがあるならそれがいつ頃なのかがぜひ知りたい。
そんなわけで、クルマの販売事情に詳しい自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に、この「ド派手顔」の事情と功罪、先行きなどを伺いました。
文:渡辺陽一郎
■すべてのカテゴリーで「ド派手化」が進んでいる
クルマの外観を見ると、日本車、輸入車を問わず、最近はフロントマスクが派手になった。特に日本車はこの傾向が強く、トヨタヴェルファイア&アルファードなどは、厚みのあるフロントグリル全体にメッキパーツを貼り付ける。
軽自動車のホンダN-BOX、ダイハツタント、スズキスペーシアなども、メッキを使った黒の大型グリルを装着して同様の効果を得ている。
SUVはスポーティな走りのイメージが強いためにミニバンほどメッキパーツは使わないが、デザインが派手なことに変わりはない。ヘッドランプは吊り上がり、グリルの存在感も強い。
セダンは印象があまり変わらないが、レクサスはスピンドルグリルの採用で、すべての車種にわたりフロントマスクの存在感が増した。
クラウンも現行型で従来の保守的な顔立ちから脱しており、次期型はさらに派手というかスポーティ指向を強めそうだ。北米向けのカムリも、現行型でかなり派手な印象になった。
このようにすべてのカテゴリーにわたり、フロントマスクの存在感が強まっている。
■「おとなしい顔」にすると売れ行きが落ちるリスク
背景には複数の理由がある。
まず日本を含めた世界的な傾向として、ブランドのアピール合戦をしていることだ。顔立ちが大人しいと迫力で負けて、販売面まで影響を受けてしまう。そこで顔立ちを派手にする。
例えば以前のアウディやレクサスはフロントマスクが大人しく、「上質なクルマには乗りたいが、それを見せびらかしたくない」と考えるユーザーに好評だった。
特に日本のユーザーには目立つことを嫌う人が多く、アウディやレクサスの控え目な顔立ちは魅力があった。
しかし海外では明らかに埋もれてしまう。自動車メーカーの開発者によれば「バックミラーにフロントマスクが映った時、思わず道を譲るようなデザインにしなければならない」という。
ずいぶんと品位に欠けた心の狭い発想だと思うが、デザインで売れ行きが伸びるなら、費用対効果では抜群にオトクだ。その結果、世界中のクルマが派手さを競うようになった。
国内のミニバンや背の高い軽自動車では事情が少し違う。ボディが箱型だから、フロントマスクが大人しいと商用車のように見えてしまう。
そしてフロントマスクに上下幅があり、天井も高いから、メッキグリルやエアロパーツを装着すると迫力が一気に強まる。セダンに同様の変更を施した場合に比べると、背の高いクルマでは変化の度合いがズバ抜けている。
そこで約20年前から、日産のラルゴや初代エルグランドのハイウェイスターが人気を得ていたが、最近はますます派手になった。
ヴェルファイア&アルファードは海外でも販売されるようになり、軽自動車は需要の中心がN-BOX/タント/スペーシアという全高が1700mmを超える車種に移り、競争が激しさを増しているからだ。
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