■このブームに終わりはくるのか?
派手なフロントマスクはいつまで続くのかと思うが、終わりはないだろう。
ホンダのステップワゴンは、フルモデルチェンジの度に顔立ちを控え目にデザインして、その後のマイナーチェンジで派手にする変更を繰り返している。控え目にデザインした時、開発者に理由を尋ねると「ライバル車とは違う個性を主張したいから」という。
しかし売れ行きが伸び悩んで、結局はライバル車と同じになる。
直近でも2017年9月に、ステップワゴンスパーダは、丸みのある柔和なフロントマスクを角張った大型メッキグリルに改めた。
ほかのメーカーは、ホンダのような負けることが分かり切った抵抗はしないから、考えることを諦めたかのように派手さを強めている。
派手な顔立ちをやめれば現行ステップワゴンの初期型のように売れ行きが伸び悩み、同じ顔立ちを頑固に守ると販売面で大損するから、派手路線から降りられない。
ただし車両のフロントマスクは面積が限られ、ヘッドランプなども装着するから、派手さを無限に強められるわけではない。
そしてN-BOXとスペーシアの標準ボディは、それぞれ独特の顔立ちで識別できるが、派手なグリルのカスタムは、フロントマスクが見分けられないほど似ている。
もはやデザインの変化が一種の飽和点に達して、お互いに(その飽和点に)行き着いてしまったからだ。
つまりこれ以上は迫力を強められず、無理に変えれば穏やかな方向に進んだりして売れ行きを下げる。軽自動車のカスタムのフロントマスクは、どうにもならない硬直化を迎えた。やがてミニバンも同じ道をたどる。
■「派手」や「存在感」を突き詰めてゆくならば
それでも純粋にデザインだけなら問題はないが、(ここからさらに進むようであれば)安全に影響する課題も生じてきた。
例えば派手なフロントマスクをさらに目立つようにドレスアップして、車高も低く落とし、タイヤのネガティブキャンバーを極端に強める改造だ。
自動車メーカーの開発者は「今のクルマには横滑り防止装置が装着され、車高やキャンバー角度を大幅に変えると、誤作動を生じる可能性がある。
通常の直進時に、車両の挙動が乱れたと判断してブレーキ制御が作動する危険がある」と警鐘を鳴らす。外観を派手に装う世界観がエスカレートして、機能に良くない影響を与えないように注意したい。
運転の仕方も同様だ。派手なクルマに乗っていると、周囲の歩行者や車両から注目を浴びる。だからこそ周囲に優しい運転を心掛けて欲しい。
「ヴェルファイア&アルファードやメルセデスベンツには、優しい感じのドライバーが多いね」、目立つ外観は、このような識別しやすくする効果もある(もちろん反対の意味で「悪目立ち」することにもつながる)。それが街中を走る自動車に施される、工業デザインの本質だと思う。
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