アコード、カムリは「グローバル的大幅変更タイプ」
■アコード
1976年発売の初代アコードは、発売時点では3ドアハッチバックだったが、後にセダンも追加され、シビックよりも上級であることを訴求した。
1985年発売の3代目は、3ドアボディのエアロデッキを用意するなど新しい発展も見せたが、セダンは5ナンバーで視界が優れ、運転のしやすく好ましいクルマであった。
ところが1993年に発売された5代目は、北米仕様とボディが共通化され、3ナンバー車になって後方視界も悪化した。
ちなみに1989年の税制改訂で3ナンバー車の不利が撤廃され、この影響で日本車に3ナンバー車が急増した。
ところがこれらの3ナンバー車は、見事に売れなかった。不振の原因は、ボディの拡大というより、日本のユーザーを甘く見た海外偏重の車作りにあった。
内外装の形状、視界、取りまわし性、運転姿勢などから、ユーザーは3ナンバーの日本車が国内市場から離れたことを鋭敏に感じ取り、売れ行きを下げたのだ。
従ってユーザーの「車離れ」という言葉は、自動車業界が生み出した都合の良い誤った言い訳だ。実際には車が日本のユーザーから離れてしまい、日本国内の売れ行きを下げた。当然の成り行きであった。
予想外の販売低迷に慌てたホンダは、1997年発売の6代目でアコードセダンを5ナンバーサイズに引き戻した。
ところがホンダの売れ筋は、すでにオデッセイやステップワゴンなどに移っていた。5ナンバーサイズの効果は空しく、2002年の7代目以降、アコードは再び3ナンバー車になった。
しかも7代目と2008年の8代目はアキュラTSXの日本版だったから、スポーティ指向が強く、走行性能も優れていたが後席は狭い。
これが2013年発売の9代目は、北米版のアコードと共通化されて室内空間が大幅に広がった。国内仕様のエンジンはハイブリッドだけになっている。まさに紆余曲折、アコードは複雑なモデルチェンジに翻弄された。
■カムリ
カムリは、今はアコードのライバル車で、生い立ちも似ている。
初代モデルは1980年に「セリカ・カムリ」として発売された。カムリの姉妹車だが、取り扱いディーラーはセリカと同じカローラ店。
1982年発売の2代目は、駆動方式を前輪駆動に変更してホイールベースも伸ばし、ミドルサイズセダンながらLサイズと同等か、それ以上に広い室内を得た。その代わりに初代のスポーティ感覚は払拭されている。
3、4、5代目は車内が快適かつ上質な5ナンバーセダンとして発展したが、1996年に発売された6代目は北米向けに開発された。
ボディが大幅に拡大されて、国内の売れ行きは低迷した。そこで2011年の9代目、2017年の10代目は、ノーマルエンジンを廃止してハイブリッド専用車としている。
「成り行き的復活タイプ」のジャスティ、ハスラー
■ジャスティ
懐かしい車名が、何の脈絡もなく復活することがある。最近では2016年のスバル ジャスティだ。初代ジャスティは1984年にスバルのコンパクトカーとして発売され、CVTを搭載する世界初の量販乗用車でもあった。
この後1995年頃に販売を終えたが、2016年にダイハツ トール、トヨタ ルーミー&タンクの姉妹車として復活した。2代目ジャスティもコンパクトカーだが、背の高いボディにスライドドアを装着しており、初代モデルとは車の性格がまったく違う。
それなら車名を変えた方が良さそうだが、そうできない事情もある。自動車に限らず商品の名称は商標登録されるが、今は使えそうな名前は、大半が既に登録されている。
仮に車種の性格に合った最適な車名を思いついても、ほかのメーカーが登録していれば、お金を支払わないと使えない。
そこで今は、自社で登録を済ませている車名を使うことが多い。ジャスティを名乗ったのも、スバルがすでに登録している車名だったからだ。
■ハスラー
軽自動車としてハスラーが発売された時、「ハスラーはバイクの名前でしょ」と思った方も多いだろう。スズキはかつてオフロードバイクのTSシリーズを販売しており、その愛称がハスラーだった。
当時は「ハスラー50」「ハスラー250」という具合に呼んでいた。その後にバイクのハスラーは生産を終えたが、四輪車で復活した。
違和感が意外に生じなかったのは、軽自動車のハスラーがSUVとして開発され、オフロードバイクに通じるイメージがあったからだろう。復活した車名の印象は、微妙なところで明暗を分けるのだ。
コメント
コメントの使い方