VWが売れていない!? その理由はどこにある?

VWが売れていない!? その理由はどこにある?

 日本自動車輸入組合(JAIA)が発表したVW(フォルクスワーゲン)の2021年1月の新規登録台数は1840台、前年同月比は34.9%減。そして2月は2244台で前年同月比は42.2%減。1月、2月とも大幅な落ち込みとなった。

 本国では2019年10月に発表されていた新型ゴルフ(8代目)が、ついに日本でも2月に先行受注が開始されるという、主力車種がモデル末期であった影響はあるだろう。さらにコロナ禍による影響もあるのかもしれないが、そのほかに要因はあるのか?

 今、VWが売れていない……。販売台数の大きな落ち込みの理由は何か? いったいVWに何が起きているのか?

文/石川真禧照
写真/フォルクスワーゲン グループ ジャパン、メルセデス・ベンツ日本

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■モデル末期のゴルフのほかにも古いモデルが……

 2021年1月のVWの販売台数が前年同月比のマイナス34.9%と大幅に落ち込んだ。

 昨今のコロナ禍のなか、「VWよ、お前もか!」というようなショッキングなニュース。確かに世界のベストセラーカー「ゴルフ」はモデル末期で、2月から新型の先行受注がはじまっている。スモールカーの「up!」はカタログモデルから消えた。

 上級セダン/ワゴン(VWはバリアント)の「パサート」は2015年のデビューだし、ミニバン系の「ゴルフトゥーラン」や「シャラン」もデビューから5年以上経過している。

VWのラインナップは、デビューから5年以上経過した車種がちらほら。ただし、例えば写真の「ゴルフトゥーラン」は、ほぼ毎年小改良され続けている
VWのラインナップは、デビューから5年以上経過した車種がちらほら。ただし、例えば写真の「ゴルフトゥーラン」は、ほぼ毎年小改良され続けている

 いま人気のSUVでは2020年1月に「Tクロス」、7月に「Tロック」を発売したが、ライバルのミニ「クロスオーバー」やアウディ「Q2」、プジョー「2008」「3008」も魅力的だ。

■2020年販売台数はベンツAクラスが2位へ上昇

 外国メーカー車モデル別新車登録台数(JAIA調べ、暦年)のデータを取り寄せてみると、かつて常勝だった「ゴルフ」は2010年にBMWミニにその座を奪われ、2019年までの4年間、2位に甘んじてきたが、2020年はついにメルセデスベンツ「Aクラス」に2位の座を明け渡し、3位になっている。

日本国内販売台数でゴルフを抜いて2位のベンツ「Aクラス」
日本国内販売台数でゴルフを抜いて2位のベンツ「Aクラス」

 どうしたゴルフ! どうしたVW!! というファンの悲鳴が聞こえてきそうだ。

 しかし、海外からは新型ゴルフに関して、ヨーロッパでは2020年にベストカラーカーの座を再び獲得した、というニュースも流れている。日本市場とのギャップが大きすぎる。

 そう思い、日本での販売戦略での実情を詳しく調べることにした。そこで判明したのは、驚くべき数字のマジックと、お家の事情だった。

■2020年にVWは新型SUVを日本に2モデル投入!

 日本でのVWの2020年の新車投入の動きを調べてみると、1月にVWでもっとも小さいコンパクトSUV、Bセグメントの「Tクロス」を発売開始。前年11月末に発表したあとの先行受注で1800台以上の予約を獲得していた。

 3気筒1L+7速DCTを組み合わせボディは全長4.1m、全幅1.76m、全高1.58mで室内は広く、大きくスライドするリアシートや先行車を完全停止まで自動追従するACC、駐車支援、歩行者検知対応エマージェンシーブレーキなどを標準装備したほかコネクテッド機能も充実。

 さらにデザインパッケージも数多く揃えていた。車両本体価格も300万円をきる299万9000円からというものだった。

 3月には「ポロ」の安全性が強化された。レーンキープアシストをオプションのセーフティパッケージに追加した。

「ポロ」は2020年3月にオプション追加でLKAを選択可能に。オプション価格はComfortline Limited向けが税込15万4000円、High LineやR-Line、GTI向けが13万2000円
「ポロ」は2020年3月にオプション追加でLKAを選択可能に。オプション価格はComfortline Limited向けが税込15万4000円、High LineやR-Line、GTI向けが13万2000円

 7月には「Tクロス」よりひとつ上のBセグメントになる、ボディとパワーユニットを拡大した「Tロック」が発売された。現行ゴルフに近いボディサイズはVWのSUVとしては初の2トーンカラーを採用、9色の多彩な色を選べるクルマとなった。

 パワーユニットは直4、DOHCの2Lディーゼルターボ。7速ATを組み合わせ、カタログ燃費は18.6km/L(WLTCモード)を達成。価格は384万9000円から販売された。

 8月には7人乗りのコンパクトミニバン「ゴルフトゥーラン」にハンズフリーのテールゲートオープン機能を備えた限定車を発売。さらにSUVの「ディグアン」にオーディオ機能をアップさせた特別仕様車を追加した。

「Tロック」は日本国内において2020年7月に発売された。全長×全幅×全高は4,240mm×1,825mm×1,590mmで、選べるパワープラントは2LディーゼルターボのFFのみ
「Tロック」は日本国内において2020年7月に発売された。全長×全幅×全高は4,240mm×1,825mm×1,590mmで、選べるパワープラントは2LディーゼルターボのFFのみ

 12月には、「Tロック」「Tクロス」に常時コネクテッドのインフォテイメントシステムを導入するマイナーチェンジを実施している。同じ12月には「ポロ」も新インフォテイメントシステム導入の一部変更が行なわれている。

■コンパクトSUVのTクロスは輸入SUVトップの売れゆき!

 以上がVWの日本での2020年の新型車の動向なのだ。これを見ると決してVWが日本市場で新型車の投入を減らしているわけではなさそうだ。そう考え、2020年のモデル別、セグメント別の登録台数を調べてみた。

 確かにモデル別で「ゴルフ」は3位になったが、「Tクロス」が新発売で一気に4位に登場(8930台)。Tクロスは同時にBセグメントSUVでも、BMWミニ「クロスオーバー」(4198台)やジープ「レネゲード」(3881台)、アウディ「Q2」(3610台)を抑えて、ダントツのトップ。

2020年、輸入車のコンパクトSUVで登録台数トップの「Tクロス」
2020年、輸入車のコンパクトSUVで登録台数トップの「Tクロス」

 ちなみにこのセグメントでは5位に「Tロック」(3159台)も入っているのだ。さらに全モデルランキングでは「ポロ」も7位(6806台)に入っている。

■Tクロス、Tロック、ポロ以外のモデルの供給不足が原因

 それなのになぜVWは2021年1月の販売台数が大幅減になったのか? VW広報部に取材した。

「コロナウイルスにより続いてるTクロス、Tロック、ポロ以外のモデルの供給不足が引き続いており、市場の需要に充分に応えられなかったこと。複数の主要モデルがモデルサイクルの末期を迎えていることで、販売への影響が大きかった」とのこと。

 さらに「2021年にはゴルフのフルモデルチェンジのほか、パサート、ティグアン、アルテオンのフェイスリフトがあります」。

 2月からスタートした新型ゴルフの先行受注では3月31日までの予約者全員にオプション費用サポートとして5万円プレゼントというキャンペーンも行なっている。さらに現在乗っているクルマが4月末までに車検を迎えるユーザーは、新型ゴルフ買い替えを前提として、車検費用サポートとして10万円提供というキャンペーンも実施している。

 新型ゴルフの先行受注の台数は、開始から約1カ月で1000台を超えて好調だという。ドイツの巨人、VWが本格的に巻き返す時が迫っているようだ。

ドイツでは2019年に登場した新型ゴルフ。日本導入は2021年としている
ドイツでは2019年に登場した新型ゴルフ。日本導入は2021年としている

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