毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ コンチェルト(1988-1992)をご紹介します。
文/伊達軍曹、写真/HONDA
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■英オースチン・ローバー・グループとの共同開発で生まれたコンチェルト
いわゆるバブル景気の炎が民衆の間でも燃え盛りはじめた1988年に、英国の自動車メーカーとの共同開発により誕生した、わかりやすい華はないが、本格的な小さな高級車。
しかし、バブルの熱に浮かされ「もっと豪華に、もっと大きく!」を求めていた当時の民衆にとって「英国調の小さな高級車」はお呼びでなかったか、1992年にわずか約4年間の“生涯”を終えた4ドアおよび5ドアのセダン。
それが、ホンダ コンチェルトです。
ホンダ コンチェルトは、ホンダが1979年から1994年にかけて提携関係を結んでいた英オースチン・ローバー・グループ(のちのローバー)と共同開発した小型セダン。
「シビックとアコードの中間」というポジショニングではありましたが、ヨーロッパ調の「クラスレスな車」でもありました。
ボディタイプは4ドアセダンと5ドアセダン(ハッチバック)の2種類で、寸法は4ドアセダンの場合で全長4415mm×全幅1690mm×全高1395mm。
搭載エンジンは当時のシビックと同じ1.5Lと1.6Lで、全車SOHCながら、1気筒4バルブ方式の「ハイパー16バルブエンジン」が搭載されました。
駆動方式は、5ドアセダンはFFのみですが、4ドアセダンには4WDも用意され、上級グレードの4WDは前後輪と後輪左右のタイヤへ独立して駆動力配分をおこなう「INTRAC」を採用するなど、先進的な機能が盛り込まれました。
サスペンションは全車、快適な乗り心地を追求した4輪ダブルウィッシュボーン(リアはマルチリンク式)です。
高剛性なモノコックボディの内部に収まるインテリアも本格的で、デザインはあくまで正調英国風。
当時のプレスリリースによれば「“シックでやすらぎを感じるインテリア”をテーマに、キャビンの広さや静かさ、そして素材、デザイン、機能性などを基本からみつめて徹底的に吟味。
表面的な豪華さや飾り立てを追うのではなく、良質なものだけを選び、豊かさや快適さを求めることにより、ヨーロピアンテイストがただよう上質な移動空間を創り出している」とのこと。
そして寸法自体は小ぶりですが、思いきったロングホイールベース&ワイドトレッド設計を採用したことで、室内の広さは十分以上。
さらには本革風および木目風のドアライニングやセンターコンソールなどを採用することで、ホンダいわく「自然なやすらぎ」が追求されています。
JXとJX-iには1.6Lクラスとしては初の電動パワーシートが採用され、走らせてみても、「めちゃめちゃイイ!」というわけではありませんが、普通に悪くないニュアンスではありました。
しかし、英国のオースチン・ローバーの工場で生産された欧州市場向けコンチェルト(ローバー200)はまずまずヒットしたようですが、国内で生産された日本市場向けコンチェルトは、まったくの不人気車というほどではありませんでしたが、盛り上がりは今ひとつでした。
そのためホンダは1992年9月に国内向けコンチェルトの生産を終了。後継モデルは「ドマーニ」という、まったく違う車名の国内専用車種になってしまいました。
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