■中低速は大得意な「e-POWER」高速走行はやや苦手?
対して、常時モーター駆動であるe-POWERは、中低速での走行が得意だ。
得意というのは、モーターの強いトルクによって、車速ゼロ(もしくは極低速)からの加速が強く、また、アクセル開度に合わせて遅れなくトルクが立ち上がるため、リニアで気持ちの良い「走り」ができる、ということだ。
電力の回生量の強さを変えることで、ワンペダルドライビングといった遊び方もできるし、反対に通常のAT車のような動きにもできる。
燃費についても、必要に応じてエンジン発電を行うため、丁寧な加減速操作をおこなっていれば、相当良い燃費を実現できる。減速時に回生充電も行うので、充電効率も良い。走りの楽しさ、新鮮さ、という部分は、e-POWERの「得意分野」だろう。
e-POWERの「弱点」として指摘されるのは、高速走行時など、強いトルクが必要な時に、「エンジン直結」状態をつくれないため、トルクを出し続けるような走り方をすると、途端に電力消費が激しくなる、という点だ。
特に、負荷がかかる登りの高速走行では、アクセルペダルを多めに踏み込まないと、車速を維持することができないことがあり、こうしたシーンは不得意分野ではある。
しかし、「e-POWERは高速走行が苦手」とはいっても、THS IIや他のハイブリッド車と比較して、e-POWERの高速走行時の燃費が格段に落ちるわけではない。
高速モードではエンジン駆動で走行するハイブリッドシステムとなるヤリスハイブリッドやフィットe:HEVであっても、高速道路モードでは、同じような割合で、燃費が落ちている。
ベースとなるクルマの諸元や、ハイブリッドシステムのセッティングの差など含まれているが、このデータを見れば、「e-POWERだけが高速燃費が苦手」とは言い切れないのだ。
■苦手分野も克服間近!? e-POWERの新たな展開
しかし、日産はこの「不得意分野」にも、対策を打ってきた。それが、可変圧縮比エンジン「VCターボ」を発電専用エンジンとして搭載した新e-POWERだ。
欧州日産が2021年夏ごろ発売予定としている、欧州専売SUV「キャシュカイ」、そしてつい先日発表された新型エクストレイルにも、このVCターボを発電専用エンジンとするe-POWERが搭載されるだろう。
新型キャシュカイは排気量1.5Lの可変圧縮比エンジンで、最高出力140kW(187ps)、最大トルク330Nmと、新型ノートの1.2リッターe-POWER(最大出力85kW(114ps)、最大トルク280Nm)に対して、およそ1.2倍はパワフルになっており、欧州のユーザーが求めるパワーに応えてくれるはずだ。
さらに、日産は先日、次期型e-POWER専用の、発電専用ガソリンエンジンで熱効率50%を実現できる技術を開発したことを明らかにした。自動車用ガソリンエンジンの平均的な熱効率は、30%台であり、40%台前半が限界とされていた。
従来のエンジンだと、ドライバーのアクセル操作に応じて、様々なエンジン負荷をカバーする出力特性を持つ必要があり、そうした中で、効率を高めていくには、限界があった。
今回、日産が発表したのは、エンジンの使用領域を最も効率の良いポイントに限定することで、エンジン燃焼を高効率化することを狙った技術だ。
つまり、エンジンが発電専用である「e-POWER」だからこそできる技術であり、この技術が計画通りに完成すれば、弱点を克服し、さらに昇華したものとなる。おそらく2~3年以内には、この技術を採用したパワートレインが出てくることになるだろう。
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