■交通量の多い地域では、SA/PAが発達
唯一の例外が、SAPAの営業だ。これだけは、サービスを向上させることで増収が期待できるので、NEXCO各社はここに大きな力を注いだ。その結果SAPAは、観光の目的地になるまで成長した。これは利用者にとっても善であった。
一方では、交通量の少ない路線では、SAPAで何をやっても、集客効果が見込めない。そのため逆にサービスが低下し、トイレと自販機のみのPAが増えた。ガソリンスタンドも減少を続けていて、一概にサービスが向上したわけではない。
これらは市場原理導入の結果なので、ある程度やむを得ないが、特にガソリンスタンド問題については、部分的に体制を修正する必要があるだろう。EVの急速充電器の拡充も、利益にならない事業だけに、市場原理に任せていては不可能だ。
料金も下がっていない。現在の民営化の体制は、借金の返済と高速道路の建設を並行して進めることを最優先しており、料金値下げの仕組みは「ない」。料金を値下げする場合は、減収分を税金などで補填しなければならない。リーマン不況時のいわゆる「1000円高速」や、アクアラインの大幅値下げは、税の投入によって行われた例外的なものだ。
利用者の不満はそこに集中するわけだが、料金を下げるなら、税を入れるしかない。税を入れてほしい分野は、社会保障をはじめとしてほかにいくらでもあり、あえて高速道路に優先的にブチ込む理由が見当たらなければ、どうにもならない面がある。
「高速道路はいずれタダになるんじゃなかったのか?」
今でもそう怒っている人もいるだろうが、実は今の体制だと、2065年度で借金の返済が完了し、以後無料化される理屈なのだ! つまり44年後である。
「なにぃ!? 俺はもう死んでるよ!」
怒りがさらに増幅しそうだが、心配はいらない。高速道路がある限り、永久にタダになることはないからだ。
道路は人工的な建築物で、寿命がある。寿命が尽きたら造り直さなければならない。その時は新たに造るよりもはるかに費用がかかる。それがまっさきに始まったのが首都高だ。首都高は交通量が非常に多く、大型車の割合も高いので老朽化が進み、最も著しい部分から造り直しが始まっている。
そのほかの高速道路では、まだ造り直しが必要なレベルには至っていないが、リニューアル工事は進んでいる。
実は、借金返済の期限は、民営化当初は2050年度とされていた。それが2065年度まで15年間延長されたのは、老朽化対策の費用を捻出するためだ。老朽化は永久に起こり続けるので、永久にタダにはならない。タダになるとしたら、クルマが空を飛ぶなどして、現在の高速道路そのものが廃止される時である。
ただ、新規路線の建設は間もなく終了するので、うまくすれば44年後には、料金がガクンと下がるかもしれない。あまりにも遠い将来すぎて、「かもしれない」としか言えないが……。
ちなみにだが、本四連絡橋のあの巨大な吊り橋は、老朽化したらどうなるのか?
それについては、最初から非常に高い耐久性を持たせているので、「適切なメンテナンスを続ければ、100年、200年は大丈夫」とのことである。また、新東名など最新の路線に関しても、半世紀前の路線に比べると大幅に耐久性が上がっているので、同じく適切なメンテナンスを続ければ、100年程度は持つ「だろう」と技術者たちは語っている。
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