2005(平成17)年10月の道路4公団(日本道路公団、本州四国連絡橋公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団)民営化以来、高速道路各社は建設や管理コストの縮減などで経営の合理化を進め、いわゆる借金の返済も順調に進んでいると思われる。
しかし、2021年に入り首都高の値上げが発表され、各高速道路も借金返済が済めば安くなるなどというのは幻想で、世界的に見ても高い高速料金の負担を強いられている状況だ。
民営化から16年、評価できる点、いまだ課題と言える点について考察していきたい。
文/清水草一
写真/Adobe Stock(MP_P@Adobe Stock)
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■民営化で、借金返済が進められるように
早いもので、道路四公団が民営化されてから、間もなく16年になる。道路公団民営化推進委員会(道路公団民営化のありかたを議論する場)が設置されてから数えると、もう19年だ。
当時、高速道路はすべてムダ、赤字を垂れ流す利権と悪の巣窟として糾弾され、その民営化をめぐって日本中が大騒ぎしたが、あれから20年近くの時が流れた。
といっても、高速道路がタダになったわけではないし、赤字ローカル鉄道のように、廃止された路線があるわけでもない。一般利用者にとっては、何が変わったのかよくわからない面があるだろう。いや、道路四公団が民営化された事実すら完全には浸透しておらず、いまだに「道路公団」と呼ぶ人も少なからずいる。利用者にとっては、道路公団だろうとNEXCOだろうと首都高速や阪神高速道路株式会社だろうと、別に関係ないし、どっちでもいいのである。
では、道路公団民営化は失敗だったのかというと、私は「大成功だった」と断言する。
いったい何が大成功だったのか?
最も大きな成果は、民営化によって、順調に借金の返済が進んでいる点にある。
「道路四公団」最大の問題は、際限なく膨れ上がる借金にあった。コスト意識が極めて希薄なため、建設費や管理費が増え続けていたにもかかわらず、倒産がない親方日の丸体質によってまったく歯止めがかからず、「このままでは第二の国鉄になる」と言われていた。
国鉄は民営化にあたって、返済不能な借金を最終的に国が肩代わりした。現在もその残高は約16兆円あり、税金で少しずつ返済している。一方、道路四公団の借金は、民営化時点で38兆円。国鉄を上回る額だった。
中でも本四連絡橋公団の借金は、絶対的に返済不能だったため、国が約1兆3500億円を投入して部分返済したが、それ以外は料金収入によって着実に返済を進めており、現在の残高は27兆円にまで減少した。これは、計画を2兆円ほど上回っている。予定よりも早いペースで借金を返済しているのだから素晴らしい!
しかもこの借金返済、新東名や新名神など、莫大な費用がかかる新規路線を建設しながら行われているのだから、大成功と言う以外にないのではないか?
公団時代に膨れ上がり続けていた借金が、民営化後に減少に転じた主な原因は、建設や維持管理におけるコスト削減だ。
公団時代は、コストを減らしたところで誰も得をしないシステムだったが、民営化によってそれが劇的に変わった。民営化といっても、株式が公開されたわけではなく、株主は100%国(首都高と阪高は自治体も株主)だが、株式会社という組織は利益を出さないと存続できないので、最低限黒字にしようと努力せざるを得ない。
しかし料金は勝手に値上げできず、仮に値下げしても、利用台数を増やして増収にまで持って行くのは極めて困難。だからコストダウンするしかない。
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