■シルビアの上位モデルに位置づけされていた180SX
180SXのことは、シルビアから1年遅れて1989年に初期型が日本で発売される少し前に、こういうクルマが出るらしい情報をキャッチした頃からずっと気になっていた。
意図的に遅らせたのか、販売サイドからの要望で後から企画されたのかはわからないが、前身のS110やS12シルビア/ガゼールにもノッチバックとハッチバックがあった流れからすると不思議ではない。ただ、リトラクタブルヘッドライトが付くらしいことがわかって一気に関心が高まった。
シルビア系の輸出モデルに由来する「SX」という専用の車名が与えられて世に現れた180SXは、機構的にはほぼ共通ながら、シルビアではエンジンが自然吸気とターボが選べたのに対し、180SXが当初はターボのみとされたのは、シルビアよりも微妙に「格上」と位置づけられていたからだという。
175psのCA18DETを積む前期型の中古車も検討したが、買うなら赤系ともとから決めていて、前期型はエンジっぽい色だったところ、マイナーチェンジで鮮やかな「スーパーレッド」になったのにも背中を押されて、やっぱり205psのSR20DETに乗りたいという思いも強く、お金もないのに思い切って新車を買ってしまった。
それから3年ほど乗った。ちょうど筆者が自動車メディアに身を投じた頃の愛車でもあり、所属していた媒体に愛車が登場したこともあった。
■失速したS14シルビアと堅調に売れた180SX
ご参考まで、1991年以前と1997年以降のデータが調達できなかったのだが、180SXとシルビアのざっくりした販売台数をお伝えすると、下記のとおりだ。
1992年 180SX約14,500台、シルビア約36,000台
1993年 180SX約16,000台、シルビア約30,000台
1994年 180SX約15,000台、シルビア約30,000台
1995年 180SX約9,000台、シルビア約18,000台
1996年 180SX約8,000台、シルビア約15,000台
若い読者はあまりご存知ないかもしれないが、大ヒットしたS13シルビアが1993年秋にS14にモデルチェンすると一気に売れゆきが芳しくなくなった。かたやモデルチェンジされず継続販売された180SXは、新鮮味もなくターボのみの設定ながらシルビアの約半分かそれ以上のペースで売れた。
累計販売台数も、S13は30万台を超え、S14は約8万5000台にとどまったのに対し、180SXが約11万5000台というのは大健闘かと思う。S14は5ナンバー枠でなくなったせいで売れなくなったという指摘もあるが、個人的にはそれよりも単純にパッとしないデザインが要因だったように思っている。
180SXが人気を博したのは、シンプルにかっこよさと、とっつきやすさにあると思う。
基本に忠実なクセのない定番的なクーペスタイルは、スポーツカー好きにとってすんなり受け入れられた。シンプルゆえ自分好みにアレンジできそうな、“素”の感じもよかった。
個人的にはBOMEXのエアロがとても気に入っていた。装着する前に手離してしまったけれど……。
180SXの約10年のモデルライフは前期、中期、後期に分けられ、途中で小規模な変更がいくつかあった。ただ、振り返るべきものとしては、1991年~の中期で前述のとおりCA型からSR型にエンジン換装されたこと。
それと、1996年~の後期でフロントバンパーのデザインが変わり丸型リアコンビランプや大型リアスポイラーが与えられるとともに、ついに自然吸気のSR20DEエンジン搭載車も設定されたことが挙げられる。
ただし個人的には、取って付けた感の強い後期型のデザインはあまり好きになれなかった。
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