クルマ好きにとってやはり「アツくなる」クルマというのはなにかしらの法則があるように感じる。乗って楽しい、見て美しい、さらには生活に根差した実用車など、アツくなるクルマがあるはず。
しかーしである。最近増えてきたEVにはあまりアツくならない。「お前はどうなんだ!!」と言われればたしかに昂る気持ちが抑えられないと思ったことはない。
そんな「クルマ好きがEVにアツくならない現象」について冷静に考えてみました。
文:鈴木直也、ベストカー編集部/写真:池之平昌信、ベストカー編集部
ベストカー2018年7月10日号
■800psのパワーを誇るEVにもなぜアツくなれないのか?
EVといえばエコカーばかりを考えるが、実はスーパーカーもある。例えばクロアチアの自動車メーカー、リマックが作った「コンセプトワン」は最高速355km/h。
京都のベンチャー企業、GLMが開発した「G4」は540ps、0〜100km/h加速3.7秒などEVの性能はすでに内燃機関のスーパーカーにも匹敵するものがある。
いずれも勇ましいスタイルに驚愕の速さを誇るが、正直に言って「それが何か?」という感覚になってしまうのはなぜか。「大きなバッテリーとモーターを積めば、パワーなんて簡単に出せるじゃん」と思ってしまうからなのか。
スーパーカーにかぎらない。どうも昔からのクルマ好きはEVに前のめりになれない。それは単に頭が固く、考えが古いからだけなのか?
これは、そんな「なぜEVに萌えないのか問題」を仮説と検証で追求する企画である。検証してくれるのはベテランジャーナリストの鈴木直也氏だ。
■【仮説1】電池をたくさん積めばパワーが出せるのが気に食わない!?
EVのスーパーカーが700psだ800psだといっても、EVは容量の大きな電池を積めば簡単にパワーが出せる。そこがエンジンとまったく違うところ。
もちろん、走りをしっかりさせるにはボディから足回り、空力など内燃機関のクルマと同じレベルが必要になるのはわかるが、なんかEVには「お手軽感」が漂うのよね。
●鈴木直也の検証
EVと内燃機関のクルマは、クォーツ時計と機械式時計の関係に似ていると思う。クォーツ時計は正確だし安いけど、機械式のような味がないよね。手軽に作れるという印象もEVに近い。
おっしゃるとおり、大きな電気を流せば速く走れるのは新幹線と同じで、クルマ好きにはなんとなく納得いかない気持ちになるのはわかる。
それにEVのスーパーカーはよく0〜100km/hが2秒台とか3秒台というけど、それってほんの一瞬のこと。まだ高い負荷を連続して出せる電池はないので、最高速も2分程度しか出せない。
つまり、それって「まやかし」であり「幻想」なんだよ。新しもの好きの富裕層は、その一瞬の速さのために何億円も出すんだろうけど、あっという間に飽きるだろうね。
【仮説の正解度90%】
■【仮説2】EVには個性やクルマの違いが出にくいから?
暴に言えば、EVは電車と同じなので何に乗っても違いがわからない。もちろん、2人乗りのコミューターとテスラが同じクルマのように感じることはないとしても、電気でヒュイーンと走っている感覚は一緒。
それで萌えられるはずないじゃないか!
●鈴木直也の検証
経験を積むほど、クルマのキャラクターのほとんどはパワーユニットで決まってくることがわかってくる。もし、GT︲Rにフェラーリのエンジンが載っていたら、それはフェラーリ。
BMWならBMWなんだよ。クルマの個性や味はパワーユニットにかなり依存しているのは間違いない。
となれば、EVで違いを出すのは至難の業。エンジンなら回転の上がり方や音、トルクの出方、あるいは回転の落ち方にも個性が出るけど、EVはパワーの大小以外に差が出せないからね。
もちろん、乗り心地やハンドリングのキレなどはクルマによって異なるんだけど、クルマから降りたら、高級だったか安っぽかったか、広かったか狭かったかくらいの印象の差しか感じない。
だからこの仮説はアリ。EVは高級車にしてもスポーツカーにしても、だいたい乗り味は想像がつくし、実際そこから大きくは外れないものだから。
フリクションがない走りは気持ちいい時もあるけど、体と心に訴えかけてくるものがないんだよね。
【仮説の正解度98%】
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