■クリーンディーゼルブームが去った現在が健全!?
ただ、結果的にこの「ディーゼル車NO作戦」は日本のクルマ社会にプラスだったと評価する人が多い。
ディーゼル排ガス規制が強化されたことで、東京の空気は世界の大都市の中でもっともクリーンと評価されているし、乗用ディーゼルがいったん“絶滅”したことで、排ガスのダーティな使用過程車がほとんど存在しない点も有利に働いている。
欧州ではディーゼルブームが早くスタートしたため、初期の排ガス規制はまだユーロ3。
その後、2005年にユーロ4、2008年にユーロ5とだんだん規制は厳しくなってゆくのだが、旧型ディーゼルの使用過程車が大量に残っているのが、現在のヨーロッパでディーゼルが大気汚染の元凶とされる原因になっている。
そういうデリケートな状況なのに、あろうことかVWがあんな排ガス偽装事件を起こしてしまったものだから、世論がディーゼル悪者論に一気に傾いてしまったわけだ。
そういう意味では、現在の欧州市場におけるディーゼル 車の立場は、石原都知事が記者会見で“スス”を振りまいた当時の日本にちょっと似ている。
かつて日本でディーゼルが叩かれていたとき、たまたまタイミングよくハイブリッド車がブレイクした例に倣って、欧州の産業政策担当者が、ユーザーをEVに誘導するためのテコとしてディーゼルバッシングを利用している……。
ちょっと考え過ぎかもしれないけど、最近の欧州勢のEV傾斜を見ていると、そんな意図があるようにすら思えてくる。
何はともあれ、一時の欧州市場のようにディーゼル車のシェアが50%を超えるような状態はバブルで、欧州市場では30%台に落ちた現在の状況の方がむしろ健全。
日本市場だって、国産勢はマツダが孤軍奮闘だけれども、輸入車をカウントしたらディーゼル乗用車のシェアは増えているわけで、欧州並みとまではゆかなくともまだまだ伸び代はある。
やっぱり、さまざまな種類のパワープラントが、ニーズに応じてバランスよく棲み分けるのが、クルマ社会にとってもっとも健全といえるのではないでしょうかね。
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