ディーゼルといえば国内ではマツダがクリーンディーゼルのイメージを先導し、トルクフルな走り、燃料代の安さなどさまざまなメリットもあるエンジンとして認識されている。
しかしながらマツダ以外の自動車メーカーはイマイチ日本市場でのディーゼル投入に消極的。国内の保有台数もガソリン車の3060万6520台に対し、ディーゼル車は107万247台に留まっている(2018年4月現在)。
なぜ日本でディーゼル車が浸透しないのだろうか?日本市場特有の傾向がありそうとのことで、自動車ジャーナリストが迫ってみました。
文:鈴木直也/写真:ベストカー編集部
■ハイブリッドがディーゼルの宿敵か!?
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジン(いわゆるオットーサイクル)とほとんど同時期(1892年)に発明された。
ところが、ディーゼルは熱効率(燃費)はいいけれども騒音・振動が大きく、小型化するのが難しい。
結果として、主に大型トラックなどのエンジンとして普及。乗用車はガソリン、トラックはディーゼルという住み分けが定着することとなった。
この常識をひっくり返したのが、2000年代から欧州で始まったクリーンディーゼルブームだ。
電子制御直噴ターボという技術的なブレークスルーをテコに、従来とは比較にならないほどクリーンでパワフルなディーゼルエンジンが出現。
フランスやイタリアなどでは乗用車でシェア50%を超える大ブームとなった。欧州のユーザーがディーゼルのどこに魅力を感じているのかといえば、もちろん燃費性能。
欧州では従来からディーゼル乗用車は一定のシェアがあったが、より低燃費で高性能なクリーンディーゼルの出現は、シブチンな欧州人に財布の紐をゆるめさせる魅力があったのだ。
では、そのころ日本で何が起きていたかというと、ハイブリッド車のブームである。初代プリウスの発売は97年だったが、2003年に2代目がデビューすると本格的に売れはじめる。
プリウス以降、日本では「低燃費=ハイブリッド」というイメージが消費者に定着し、人気ジャンルとして大きなシェアを占めるに至っている。
技術的なテーマは同じく低燃費なのに、日本ではハイブリッド、欧州ではディーゼルが主流となった理由は、ひとつにはクルマの使われ方の違いがある。
内燃機関の苦手な発進・停止を電気でアシストするハイブリッドは、ストップ&ゴーの多い市街地燃費が抜群。一方、エンジンそのものの熱効率の高さがウリのディーゼルは、長距離・高速巡航でその最良の面を発揮する。
だから、ディーゼルもハイブリッドも、それぞれ“アウェイ”で苦戦するのは当たり前。欧州では依然ハイブリッドのシェアは高くないし、マツダがブレイクするまで日本市場でディーゼルはなかなか売れなかった。
もうひとつ、これは日本ローカルな問題だが、欧州でクリーンディーゼルがブレイクする直前、東京で石原都知事による「ディーゼル車NO作戦」が勃発したことも影響が大きかった。
記者会見でペットボトルに入れた“スス”を振りまき、舌鋒鋭くディーゼル排ガス規制の甘さを批判する石原都知事のパフォーマンスがマスコミで大きく報道され、ディーゼル車のイメージは大きく失墜。
とくに乗用ディーゼルはしばらく立ち直れないほどの打撃を受ける。
プリウスをはじめとするハイブリッド車は、ちょうどそんなタイミングでデビュー。本当はライバルになっていてもおかしくないディーゼルがコケている間に、日本のエコカー市場はハイブリッドの一人勝ちとなってゆくのである。
コメント
コメントの使い方