■想定外のライバル車は現場セールスマンも驚く好調ぶり!
オーラは新型アクアの正式発売より約1カ月前の6月中旬にデビューしているのだが、デビュー早々から販売現場では意外なほど好評を博していたのである。さすがにオーラだけで新型アクアの販売台数を抜くことはまずないと考えられるのだが、トヨタとしては意外な“目の上のコブ”の出現を警戒しているようなのである。
オーラを含む現行日産ノートシリーズは、日産とルノーが共同開発した“CMF-B”プラットフォームを採用している。オーラは単に国内向け派生車種としてデビューしたのではなく、今後海外展開するノート(車名は変わるかも)としての3ナンバー仕様がオーラとなって国内展開しているのかもしれない。
このようなパターンは、スズキ スイフトがすでに海外仕様は3ナンバーサイズとなっているが、国内仕様のみ5ナンバーとなっているといった事例や、同じ3ナンバーサイズなのだが、現行カローラ(セダン&ツーリング)がグローバルサイズ比で全幅が狭く、全長の短い国内仕様をラインナップしていたりする。
話をオーラに戻すと、とにかく現場のセールスマンも驚くほどお客からの反響があるとのこと。「3ナンバーサイズのノートが出そうだ」といった情報がメディアに出るようになると、さっそく問い合わせがあったという。
「他メーカーのライバル車との比較もなく、指名買いされるお客様が目立ちます」とは、日産系ディーラーセールスマン。しかも、セットオプションで40万円ほどになるのだが、BOSEオーディオシステム(BOSEパーソナルプラスサウンドシステム)を選択するお客が大半となっているとのことでもある。
ノートシリーズは先代モデルでも、“メダリスト”シリーズをラインナップし、日産の上級車などからの“ダウンサイザー”の受け皿としていた。日本国内での日産の新車販売について、“量販が見込めるのは、軽自動車、ノート、セレナぐらい”などと言われることがある。とにかく、よく売れるモデルが極めて限定的となっているのは間違いない。
販売終了車種も多く、ティアナやシルフィといった、かつての人気車種も、既納客を多く抱えたまま販売終了となっている。ノート自体も現行モデルではレンジエクステンダーEVとなる“e-POWER”のみを搭載し、上級志向となっているのもダウンサイザーの受け皿を意識したものといえる。
そこへさらに3ナンバー化したオーラの登場となっている。ティアナはもちろん、シルフィでさえ最終モデルは3ナンバーとなっているので、「最新の日産車に乗り換えたい」と思っていても、5ナンバーのノートへの乗り換えに抵抗を見せる人もいるだろう。オーラはそんな人たちに、ドンピシャで“はまった”ようなのである。
■「コンパクトハッチバック=女性=5ナンバーサイズ」は時代錯誤!?
コンパクトハッチバックだからといっても、世界的には日本でいうところの全幅が1700㎜オーバーとなる、3ナンバーサイズなのが一般的。
オーラ登場以前には、スズキが3ナンバーサイズのコンパクトハッチバックである「バレーノ」を日本国内でも発売したが、短命のうちに国内販売を終了しているが、これは日産のようにティアナやシルフィなどの存在がなかっただけで、バレーノ自体が否定されたというわけではないと考える。
トヨタでは、3ナンバーサイズのハッチバックとしてカローラスポーツがあるのだが、オーラの全幅が1735mmで1750mm以内なのに対し、カローラスポーツは1750㎜を大きく超えている。3ナンバーサイズが増えるなかで、この“1750㎜の壁”は結構高く、モデルによっては売れゆきを大きく左右することにもなりかねないのである。
オーラは全幅が1750㎜以内となっているところも注目を浴びたといえよう。つまり“一強”といわれるトヨタにはラインナップされていないサイズとキャラクターを持ったモデルなのである。
新型アクアのスタッフマニュアルを見る限りは、あえて5ナンバーサイズに収めることにより、取り回しなどの実用性の高さをアピールしていた。
カタログやテレビCMを見ると、女性ユーザーへのアピールをより意識しているように見えるが、“コンパクトハッチバック=女性=5ナンバーサイズ”というのは、いまの世の中では少々時代錯誤的なアピールに受け取られてしまうかもしれない。
海外ではキャリア志向の強い女性ほど、男性顔負けの大きなクルマや、アグレッシブなモデルを進んで愛車にすると聞いたことがある。“可愛いクルマ(スタイルだけでなく、軽自動車やコンパクトカーなどサイズ的なものも含めて)=女性向け”というのは、日本のみといっていいほどのロジックとなっている。
ヤリスとの明確な差別化を狙うならば、1750㎜以内の“ちょっぴり3ナンバーサイズ”にしてもよかったのではないかと考える。
トヨタの販売現場で話を聞くと、ノート系がレンジエクステンダーEVを採用していることもあり、ノートはあまりライバルとして意識せずに、むしろホンダ フィットを意識している様子がうかがえる。これがまた、オーラを“目の上のコブ”にしてしまったようにも見える。
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