フィットはなぜ苦戦? 中身は良いのに売れない4つの理由

フィットが苦戦する背景にライバルとデザイン

 1つ目の理由は、現行フィットのデザインだ。フロントマスクは柔和な顔つきで、ボディサイドは水平基調だから側方や後方の視界も良い。機能的には優れた造形だが、従来型に比べると、雰囲気や見栄えの印象が大きく変わった。

 内装も水平基調で視界やメーターなどの視認性に配慮したが、ステアリングホイールのスポークは2本だ。従来型に比べて変化が大きく、物足りない印象を受けることもある。

フィットと同時期に発売されたトヨタ ヤリス。グレードの豊富さと139万5000円から購入できることもあり、月平均登録台数約9500台と人気を博している(ヤリスクロスとGRヤリス除外)
フィットと同時期に発売されたトヨタ ヤリス。グレードの豊富さと139万5000円から購入できることもあり、月平均登録台数約9500台と人気を博している(ヤリスクロスとGRヤリス除外)

 販売が低迷する2つ目の理由は、ライバル車の動向だ。フィットが発売された2020年2月には、トヨタもコンパクトカーの新型ヤリスを投入している。従来型になるヴィッツは2010年に発売されたから、ヤリスは10年ぶりのフルモデルチェンジとなり、売れ行きを伸ばした。

 フィットのエンジンは、直列4気筒1.3Lのノーマルタイプと1.5Lのハイブリッドだが、ヤリスは直列3気筒1.5Lと1.5Lハイブリッドに加えて、低価格の1Lも用意した。そのために最も安価なグレードは、フィットでは155万7600円だが、ヤリスは139万5000円から選べる。

 つまりヤリスはグレードが豊富で、少ない予算に対応できることもあり、フィットよりも売れ行きを伸ばした。ヤリスの登録台数は、2021年1~8月の月平均が約9500台だから(ヤリスクロスとGRヤリスを除く)、フィットの約2倍に相当する。

 さらに2020年の末には、ノートもフルモデルチェンジを行った。このように現行フィットの発売時期は、ライバル車のフルモデルチェンジと重なり、販売面で不利を強いられた。

3つ目の苦戦理由はホンダの「身内」にあり?

ホンダ N-BOXの届け出台数は、2021年1~8月の月平均が約1万7600台。新車購入の際に、フィットからN-BOXに乗り換えるユーザーも多い
ホンダ N-BOXの届け出台数は、2021年1~8月の月平均が約1万7600台。新車購入の際に、フィットからN-BOXに乗り換えるユーザーも多い

 フィットが販売面で苦戦する3つ目の理由は、同じホンダの軽自動車、N-BOXにユーザーを奪われていることだ。ホンダの販売店では「小さなクルマを希望するお客様は、大半がN-BOXを選ぶ。以前ならフィットを買われたお客様も、今はN-BOXを指名される」という。

 N-BOXの届け出台数は、2021年1~8月の月平均が約1万7600台に達する。好調に売られるヤリス(ヤリスクロスとGRヤリスを除く)の約9500台と比べても、N-BOXの売れ行きは圧倒的に多い。

 そしてフィットは後席や荷室に余裕を持たせた実用指向のコンパクトカーだが、N-BOXも軽自動車でありながら、背の高いボディによって車内はフィットと同等かさらに広い。

 価格については、N-BOXは軽自動車だから、高機能でも売れ筋グレードが155万~180万円に収まる。フィット1.3ホームの176万7700円に比べると、価格帯としてはN-BOXが少し安い。そのために今のホンダを代表する売れ筋車種は、フィットではなくN-BOXになった。

 それにしても、今のN-BOXの売れ行きは過剰だろう。2021年1~8月に国内で新車として売られたホンダ車のうち、N-BOXだけで34%を占めるからだ。N-WGNなどを加えた軽自動車全体になると、国内で販売されたホンダ車の56%が軽自動車だ。

 軽自動車は1台当たりの粗利が低いので、その比率が高まると、車両の販売に伴う儲けが減ってしまう。しかもホンダは、昔から軽自動車で商売をしてきたスズキやダイハツに比べると、車両販売に必要な営業コストが高い。

 軽自動車の比率が過度に高まるとバランスを悪化させるため、N-BOXについては、低金利キャンペーンやディーラーオプションプレゼントを実施していない。販売促進をほぼ完全に控えているが、それでも好調に売れてしまう。

 ホンダではさまざまな車種がN-BOXの影響を受けて売れ行きを下げており、その代表がフィットになっている。

次ページは : 生産工場の変更もフィットの足かせに

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