■水素ガソリン開発、イタリアで純ガソリン車のスポーツカー保護という新しい動きも
一方では、旧世代が喜ぶニュースも舞い込んでいる。
ひとつは、ポルシェがエクソンモービルと共同で水素と二酸化炭素(CO2)を化学的に合成した燃料(eフューエル)を開発中、というもの。内燃機関を愛するポルシェユーザーのための燃料で、水素ガソリンとも呼ばれる。今年中には南米アルゼンチンのパタゴニアで、再生可能エネルギーを用いて水素を生産し、それを使って製造が始まる。
現状のコストは通常ガソリンの10倍だが、将来的には1リッター2ドル(約220円程度にまで引き下げるのが目標、とポルシェの首脳陣は語っている。
ポルシェに限らず、こういったカーボンフリーなガソリンの製造が軌道に乗れば、ガソリンエンジンは生き残れる。燃料コストは大幅に上がるので、一般的なクルマには高すぎるが、趣味性の強いスポーツカーや、走る宝飾品であるスーパーカー用なら何の問題もない。無音のEVばかりのなか、内燃機関の咆哮は、特権階級の象徴としてもてはやされそうだ。
トヨタの水素エンジンも、「内燃機関生き残り策」として話題になったが、水素は専用タンクを積まねばならないし、パワーも出しづらく、運搬も貯蔵も難しい。一方カーボンフリーガソリンなら、供給網も内燃機関も、現状のままですべてオッケー! なんてすばらしいことでしょう。
もうひとつは、「イタリア政府が、フェラーリやランボルギーニなどのスーパーカーを守るべく、EUと協議中」というニュースだ。
このままでは、2035年には、すべてのスーパーカーがEVにならざるを得ないわけで、イタリアとしては危機感を持って当然。この協議が実るかどうかは未知数だが、カーボンフリーガソリンの実現可能性と併せて考えれば、ガソリンエンジンのスーパーカーは、今後も存続可能かもしれない。
■最高の純ガソリンスポーツカーを国別にピックアップ!
なんとなくスーパーカーの未来が明るくなってきたところで、後世に残したい現行スポーツカーのガソリンエンジンを、各国1台ずつ選出してみたいと思います。
GT-Rのエンジンも2020年モデルから超絶スムーズで気持ちよくなったが、やっぱり回す快感やサウンドは自然吸気が上。レクサスLCのV8は、レクサスLFA譲りのサウンド技術により、陶酔のエクゾーストノートを発する。これからのスポーツカーは、速さよりも快楽優先! と思えば、これが日本代表です。
●日本/レクサスLC/RC Fの5リッターV8エンジン
●日本/レクサスLC/RC Fの5リッターV8エンジン
■エンジン形式:V型8気筒DOHC
■排気量:4968cc
■最高出力:477ps/7100rpm、RC Fは481ps
■最大トルク:540Nm(55.1kgm)/4800rpm、RC Fは535Nm(54.6kgm)
■0~100km/h:4.4秒(LC500)、4.5秒(RC F)
■最高速度:270km/h(LC500)、274km/h(RC F)
■価格:1350万~1450円(LC500)、1052万~1449万円(RC F)
●アメリカ/コルベットの6.2リッターV8、OHVエンジン
アメ車からは8代目コルベットを推したい。コルベット史上、最もドラスティックに変貌を遂げた8代目は、これまでのフルフレーム構造のシャシーに軽量なファイバーボディを組み合わせた2シーターFRを捨て、誰も驚いたミドシップレイアウトを採用した。しかもフルフレーム構造ではなく、フェラーリF8トリブートやホンダNSXなどと同じアルミスペースフレーム構造である。
古典的な自然吸気V8、OHVエンジンのビートは絶品。GMがあえてOHVを残している理由は、このフィーリングの維持・保存にある。できれば永久に残してもらいたい。
●アメリカ/シボレーコルベットの6.2リッターV8エンジン
■エンジン形式:V型8気筒OHV
■排気量:6153cc
■最高出力:502ps/6450rpm
■最大トルク:637Nm(65.0kgm)/5150rpm
■0~100km/h:2.9秒
■最高速度:312km/h
■価格:1180万~1550万円(コンバーチブル)
●ドイツ/メルセデスAMG A45S 4MATIC+の2リッター直4ターボ
AMG GTからA45まで、現在のAMGエンジンの快感はスバラシイ。ついでにアストンマーティンに供与されているAMGエンジン(4リッターV8ターボ)のフィールも最高なれど、1000万円以下で買えるA45Sもぜんぜん負けてない! 誉れ高い2Lクラス最強のターボエンジン!
快感ターボエンジンならAMGにとどめを刺す! 「バリバリバリバリ!」というアフターファイアー音よ永遠なれ!
●ドイツ/メルセデスAMG A45S 4MATIC+
■エンジン形式:直列4気筒直噴DOHCターボ
■排気量:1991cc
■最高出力:421ps/6750rpm
■最大トルク:500Nm(51.0kgm)/5000~5250rpm
■0~100km/h:3.9秒
■最高速度:270km/h(リミッター作動)
■価格:790万円
●イギリス/アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラのV12ツインターボ
アストンマーティン自身がDBSスーパーレッジェーラを史上最速のGT(グランツーリスモ)と謳う。DB11がGT、このDBSスーパーレッジェーラはスーパーGTカーという位置づけだ。725ps/900Nmの5.2リッターV型12気筒ツインターボをフロントに搭載し、0~100km/h加速は3.4秒、最高速度は340km/hを誇る。
ターボ付きながら、このエレガンスのカタマリのようなフィールは何!? とろけてしまうがな~! まさに貴族の放蕩です。
●イギリス/アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ
■エンジン形式:V型12気筒DOHCツインターボ
■排気量:5204cc
■最高出力:725ps/6500rpm
■最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1800~5000rpm
■0~100km/h:3.4秒
■最高速度:340km/h
■価格:3645万円
●イタリア/ランボルギーニ・ウラカンのV10エンジン
フェラーリV8がすべてターボ化され、天使のようなフェラーリサウンドを失った。やっぱりエンジンの快感なら自然吸気が優位なのですが、個人的にはフェラーリV12よりも、ウラカンのV10エンジンのほうが気持ちイイです。
まあこれは好みの問題ですし、フェラーリ812スーパーファストはFRゆえにトラクションが不足していて、アクセルをほとんど全開にできないという問題があるのです(細かいことですが)。
ウラカンのV10はアウディだろうというご指摘もあるでしょうが、いいものはいい! アヴェンタドールのV12は、この2台に比べるとそんなに気持ちよくないので落選です。
●イタリア/ランボルギーニ・ウラカンSTO
■エンジン形式:V型10気筒DOHC
■排気量:5204cc
■最高出力:640ps/8000rpm
■最大トルク:565Nm(57.6kgm)/6500rpm
■0~100km/h:3.0秒
■最高速度:310km/h
■価格:4125万円
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