流れの速くない高速道路を中心に慣らし運転をしながら約1000kmを走った燃費は12.5km/Lだった。この燃費は初代86前期型とMT同士で比べると5%落ちというイメージで、動力性能の向上を考えれば得たもののほうが多いといえ、カタログ発表ほども燃費は落ちていない印象だ。
■ハンドリング、乗り心地、快適性
この3点はボディ剛性の大幅な向上を基盤にした、スバルが提唱する動的質感の大幅な向上が公道を普通に乗っただけでも感じられた。
まず、ハンドリングはハンドル操作に対するクルマの動きの正確性が格段に向上しており、ワインディングロードなどを普通に走ってもより楽しめるクルマになった。また、雨の高速道路ではクルマ自体に加え、空力性能の向上も貢献しているようで、スタビリティ(走行安定性)の劇的な向上も確認できた。
乗り心地は筆者の新型BRZが先代プリウスとのタイヤとなる17インチのミシュランプライマシーHPを履くことが、いいほう、悪いほうのどちらに作用しているのかは定かではない。が、荒れたところを含め路面の凹凸を乗り越える際に、「コトン」とか「コンコーン」という心地よい音を伴いながら、凹凸の通過が「気持ちいい!」と感じることがしばしばあるくらい快適だった。
新型BRZの乗り心地のよさはボディ剛性の強化に加え、ダンパーの進化によるところも大きいのだろう。ボディとダンパーがこれだけよくなっていると、スポーツ走行の際の荷重コントロールなどもしやすく、サーキットなどでもより速く楽しいクルマになっているに違いない。
快適性をスポーツカーに求めるのは野暮なのかもしれないが、静粛性の向上も印象的だった。具体的にはエンジン音は街乗り領域だと法規が厳しくなっていることもあり、スポーツカーとしては静か過ぎるくらい、ボディ剛性の向上も貢献しているのかロードノイズも格段に小さくなった。
また、初代86は遮音材が最低限だったこともあり、強い雨のなかだとルーフに当たる雨音が「バタバタバタ」と非常に大きく、怖さを感じることもあった。それが新型BRZではルーフがアルミ製となったことによる吸音の効果が大きいようで、強い雨のなかでもルーフに当たる雨音は「シトシト」という上品なものとなっている点にも感心した。
■実用性
人は乗らなくとも荷物を置く際などに便利なリアシート、ラゲッジスペースとも初代86と同等のスペースが確保されており、文句はない。
■インテリア
初代86オーナーから見た新型BRZに対する最大の不満は、メーターを中心としたインテリアだ。
まず、ダッシュボードはよく見るとプラスチックとなる部分が意外に目立つ。しかし、この点に対して筆者はこれだけ性能が向上して、据え置きに近い価格でフルモデルチェンジしてくれたことを考えると、許容範囲と判断している。
ただ、初代でよかった後方視界を広くしてくれたフレームレスインナーミラー(これは初代で年数が経つと腐食するという問題もあったが)、特にセンタートンネル側がありがたかった左右の膝を柔らかく支えてくれたニーパッド、筆者がエアゲージを入れるのに使っていた前席シートバックポケットが、新型BRZでは上級のSグレードでも装備されない点はちょっと残念だ。
最大の不満点となるメーターは、走行モードをスポーツ走行用のトラックモード、横滑り防止装置全オフにするとタコメーターがバーになるのだが、筆者個人としては見にくいと感じている。もちろん、この設定もあっていいのだが、せっかく選択幅が広い液晶メーターにしたのであれば、トラックモードと横滑り防止装置全オフでも通常の丸いタコメーターを選べるなどの、カスタマイズ機能が欲しかった。
なお、筆者はプロトタイプの試乗会でトラックモードと横滑り防止装置全オフでは水温と油温が数字で表示される機能があるのを見つけ、「これなら後付けのメーターが不要なので、安上がり!」と喜んでいた。
しかし、この表示は自分のBRZでいくら探しても見つからず、どうやらGR86だけの機能だったようだ。新型BRZも油温はザックリとした数字でのバー表示はあるが、この点は新型BRZとGR86で迷った際に人によっては無視できない違いとなるかもしれない。
メーターに関しては、後からでもソフトウェアのアップデートとして筆者が欲しい機能が加わると嬉しい。
■まとめ
メーターを中心に文句はつけたが、総合的に見ると新型BRZは期待以上の進化により、初代モデルの登場から9年分シッカリ大人になっており、筆者は価格を含め大満足で、「買ってよかった!」と断言する。
筆者は自分の新型BRZに対する満足度が初代同様ジワジワと高まっており、まだしていないスポーツ走行など確認できていないことも多々あるのもあり、新型BRZに乗りたくてしかたない。10月にはクローズドコースでのドリフト練習を2週連続で予約しているので、機会があればこの際の印象もお伝えしたい。
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