GT-RとZ 日産が無理して2車種作り続ける狙いと事情

「技術の日産」を誇示するためには必要だった「GT-R」

 一方のGT-Rは、レースで勝利するために誕生したスポーツカーだ。GT-Rには、勝利することで「日産の技術力の高さ」を伝え、「ブランドのイメージ」を引き上げる役目がある。

 国内レースで活躍した1969年以降の第1世代GT-R、グループAで連勝しまくった1989年以降の第2世代GT-R、そして海外へ羽ばたき300km/hの夢を見せてくれた2007年以降の第3世代GT-R。戦うレースシーンは変わっていったが、負け続けるような姿は決して見せてはならない。少なくとも、諦めない強い姿勢を見せ続ける使命を課せられたモデルだ。

 なかでも、2007年に誕生した現行R35型GT-Rは、ポルシェやフェラーリ、メルセデスAMG、BMW Mなど、世界の名だたる強豪と比べても高い戦闘力を誇るスーパースポーツカーとして、世界中に認知されるまでになった。

 そのR35GT-Rの2022モデルが、2021年9月14日に発表となった。通常モデルに加えて、特別なボディカラーや専用パーツを与えた特別仕様車「プレミアムエディションT-spec」と、「トラックエディションengineered by NISMO T-spec」が、合わせて100台限定で販売されることとなったが、予想通り応募が殺到。

 時期から考えても、今回がこのR35型GT-Rの最終モデルとなるのはほぼ間違いなく、先日発表されていた、GT-R NISMO 2022モデルと同じく、既に手に入らないクルマとなってしまっている。

GT-R 2022年モデルの通常モデル。エンジン特性やトランスミッション、サス設定、デザインは、2020モデルと原則同じ。ワンガンブルーのボディカラーも設定に残っている
GT-R 2022年モデルの通常モデル。エンジン特性やトランスミッション、サス設定、デザインは、2020モデルと原則同じ。ワンガンブルーのボディカラーも設定に残っている
プレミアムエディションT-spec。写真のボディカラーはミレニアムジェイド
プレミアムエディションT-spec。写真のボディカラーはミレニアムジェイド
専用内装色が施された、プレミアムエディションT-specのインテリア
専用内装色が施された、プレミアムエディションT-specのインテリア

どちらも日産のプライドが詰まっている

 コストへの制約が非常に厳しいZに対し、「速さ」を求めるGT-Rには、新技術(=コスト)を惜しみなくつぎ込む。スポーツカーというジャンルは同じだが、目的のちがうこの2車種は、似て非なるものだ。

 開発工程も、まったくちがう。R35デビュー当時、R35の開発責任者である水野和敏氏率いるGT-R開発チームは、日産のエンジニアのなかでも特に選抜された者のみで構成される特別編成チームであったのに対し、Z34は、スカイラインやフーガといった、FRプラットフォームを開発するライン設計部隊の手によって開発されていた。

 他社車に絶対に負けられないGT-Rに対し、お客様へリーズナブルに提供することが求められるZ。どちらの方が難しい開発なのかは言い切れないが、どちらも日産渾身の一台であることは変わりない。

1969年当時から現代に至るまで、幅広い年齢層のスポーツカーファンが育ったことは、日産の財産だ
1969年当時から現代に至るまで、幅広い年齢層のスポーツカーファンが育ったことは、日産の財産だ

 3万ドル以下という、自らが課した制約を頑なに守ってきたとこで、ファンから支持され、つくりつづけることができたフェアレディZと、技術の日産をアピールするためには、諦めることができなかったGT-R。日産がこの2車種の製造を辞めなかったことは、いまの日産にとってかけがえのない財産だ。

 しかし今後も守り続けられるとは限らない。環境保全が強く求められる中において、このようなスポーツカーをどのように守っていくか。ファンとしては、この2車種が末永く続いていくことを祈っている。

【画像ギャラリー】日産最高峰の4WDスポーツカー「GT-R」と、孤高のFRスポーツカー「フェアレディZ」の歴代モデルを写真で振り返る!!

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