自動運転技術の最前線を紹介していく本連載。連載第24回となる本稿では、自動運転技術が普及し始めてからずっと言われている大きな課題、「クルマを操る(運転する)楽しさと自動運転は両立するのか」。じっくり検討します。
文/西村直人
写真/AdobeStock(アイキャッチ写真AdobeStock_comzeal)、テスラ
シリーズ【自律自動運転の未来】で自動運転技術の「いま」を知る
■自動運転技術の課題は「人間との協調」
車両への実装を踏まえた具体的な自動運転技術が話題となって10年以上が経過しました。
2013年頃からは自動運転技術を項目ごとに大別した「自動化レベル」という概念が提唱され、現在では運転支援技術(レベル2まで)と自動運転技術(レベル3以上)を含めたレベル0~レベル5の6段階で示されています。このことは読者の皆さんもご存知でしょう。
では、この先も過去に策定された6段階の自動化レベルに則って技術は昇華されるのでしょうか? 答えはNOです。
なぜなら、レベル2までの運転支援技術とレベル3以上の自動運転技術は各レベルのなかで独自に進化し、現在の自動化レベルの6段階に当てはまらない事象がすでに発生しているからです。
たとえば2021年3月に世界で初めてレベル3を備えたホンダ「レジェンド」が法人向けにリース販売されました(本連載でも詳細を紹介しています)が、実際に公道でレベル3を使ってみると、有用性の高さとともに、これまでの枠組みでは考えられてこなかった新たな課題が見えてきました。
課題のひとつが「人の振る舞い」です。詳細は当連載第5回(※)に譲りますが、レベル3稼働時は自動運転システムからの問いかけを正確にドライバーが認識し、確実な操作を、適切なタイミングでドライバーが行なうことが求められます。
※https://bestcarweb.jp/feature/column/266066
「レベル3稼働時」と記しましたが、じつはレベル1やレベル2の運転支援技術の領域でも“問いかけ”は発せられています。
たとえばレベル1のACC機能では、前走車に対し急激に近づいた場合にはドライバーのブレーキ操作を要求し、レベル2のACC+車線維持機能で車線から外れそうになった場合にはドライバーのステアリング操作を要求する、といった具合です。
こうしたシステムからの要求は「TOR」(Take Over Request/ドライバーへの運転操作要求)と呼ばれ、現時点ではドライバーの運転経験を問わず、システムからの画一的な意思表示が行なわれます。
具体的には、ディスプレイ表示やブザー音、さらには各所へのLED点灯などあらゆる手を尽くしシステムはTORを発してドライバーに訴えかけるのですが、それが何を示すのかという理解はドライバーの感覚に委ねられます。
取扱説明書にはその旨が細かく記されているものの、残念ながら熟読するドライバーが少ないと言います。
よって、この先はドライバーの経験や技量などに応じた意思表示が行えるHMI(Human Machine Interface/人の機械の接点となる装置)が必要であることがわかってきました。
ちなみに、レベル3を説明する文言として「システムからの再開要求に従って」という主旨で概要は織り込まれているものの、どのような技術が必要であるのか詳細までは踏み込まれていません。
つまり、アクセルやブレーキ、そしてステアリング操作を自律的に行なう進化した自動運転技術を車両に装備するためには、それらを正しく使っていくために必要な新たな仕組み(HMI)が必要です。
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