■「手動運転は残る」と
さらにこの先は、乗用車発の自動化レベル3の技術は小・中・大型トラックや大型観光バスにまで拡大します。まずは、大型トラックから導入される線が濃厚です。
大型トラックは高速道路を使った1回の走行距離が長くなる傾向にあります。具体的には500km/回を超える場合が過半数であることから、レベル3の拡大適応は有用性が高いといえます。
トラックへのレベル3の導入は大型→中型→小型の順番です。小型トラックは働く道路の大部分が一般道路であることから導入が最後になります。
大型観光バスも大型トラックと同様に走行距離が長くなり、ツアーバスの場合は数日に渡ることもあるため、レベル3の実装が待たれます。
レベル3ではステアリング操舵を自動で行なうため高い制御技術が求められます。その点で商用車、とりわけ大型トラックの場合はステアリング機構が積荷による車両負荷の影響を直接受けるため、自動操舵技術は難易度が高いと言われています。
現在、三菱ふそうの大型トラック「スーパーグレート」では、「アクティブドライブアシスト/同2」の一機能として同一車線内での車線維持支援システムを実装しています。またUDトラックスの大型トラック「クオン」では「UDアクティブステアリング」として、路面の轍が原因となるステアリングへの外乱を電動モーターによる反力で打ち消しドライバーの身体的疲労度を軽減する機構が組み込まれています。いずれも既存の油圧式ステアリング機構に電動モーターを組み込みドライバーに代わって操舵を行なっています。
これがレベル3となると電源系の冗長性確保が求められることから、現状の電動モーター制御から進化した別のステアリング機構が求められ、三菱ふそう/UDトラックスともに車両の大幅な構造変更が不可欠です。
日本では乗用車/商用車/MaaS、この3領域で自動運転技術が実用化されてきました。技術は独自昇華し、そして部分的に共有されて育まれ、二輪車やフード配送車両などにも転用され活躍の場が拡がっています。
筆者はこの10年、各国の自動車メーカーやサプライヤー企業の経営陣に「いつになったら自動運転社会は到来するのか?」と同じ質問をぶつけてきました。
その回答には「2050年あたりまでは人が運転する手動運転と、システムが運転する自動運転が混在した社会となる」という主旨のコメントが必ず入っていて、同時に「完全自動運転社会になっても手動運転は残す」とした力強い発言も数多く聴かれました。
短期集中連載「シリーズ 自律自動運転の未来」は当25回をもって終了します。これまで約半年間ご愛読頂き、ありがとうございました。
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