自動運転はいつ実現するのか? 現在地はどこか??【自律自動運転の未来 最終回】

■新型車に衝突被害軽減ブレーキ装着が義務化

 内閣府による「第11次交通安全基本計画」では、令和3(2021)年度から令和7(2025)年度の交通事故について、令和7年度までに事故発生から24時間以内の死者数を2,000人以下、重傷者数を22,000人以下にすることが織り込まれました。

 死者2,000人以下とは非常に高い目標値であり、これが実現すれば世界でもっとも安全な交通社会が実現します。

 第11次交通安全基本計画では、「道路交通の安全」として6項目に注力していますが、その4番目「(4)先端技術の活用促進」では、衝突被害軽減ブレーキの重要性が示されました。

 電波を使った車々間通信による車両の相互協調、自動化レベル3以上の自動運転技術のさらなる実用化や自動運転車両へのインフラからの支援に加えて、「衝突被害軽減ブレーキ」のサポートを受けた安全な交通環境が改めて定義されています。

 ご存知のように2021年11月以降に発売される新型の国産車に関して基準を満たした性能を有する「衝突被害軽減ブレーキ」の装着義務化が施行されたわけですが、国土交通省が先頃公表した最新の統計データによると、令和元(2019)年に国内で新車販売された乗用車のうち、衝突被害軽減ブレーキ搭載車はすでに93.7%に達しています。

 統計を開始した平成23(2011)年には1.4%であったものが、その有用性が認められた結果、ここまで高い普及率を示しました。ちなみに、国内の保有台数に占める衝突被害軽減ブレーキ搭載車は令和元(2019)年8月時点で約24%にあたる1,972万台です。

 また、衝突被害軽減ブレーキの技術を部分的に応用した「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」は、衝突被害軽減ブレーキの普及率に比例し83.8%まで高まりました。

 ちなみに、国土交通省では衝突被害軽減ブレーキを自動化レベル1と解釈する一方で、警察庁では衝突被害軽減ブレーキは緊急時に介入する制御技術であることから自動化レベルと分離した考え方が用いられています。

■これまでの技術がアップデートされてゆく

 自動運転技術のこの先はどうでしょうか?

 国土交通省が2020年6月に発表した自動化レベル3(自動運行装置レベル3)の国際基準では、高速道路(条件例/中央分離帯のある反対車線と物理的に分割されている本線)での、同一車線において(=車線変更を伴わない)、60km/h以下で機能すると定められ、Honda SENSING Eliteでは50km/hを上限速度としています。

 この基準のうち、速度を130km/h以下と2倍に引き上げ、さらに車線変更まで認める方向で議論が進められています。内閣府としては2026年3月末までに実現させたいとの意向があるようですが、これまでの技術進化や法改正のスピード感からすると2024年中には実現可能になると筆者は予想します。

 もっとも、縦横無尽にどんな状況でもレベル3を実現させるには相当な年月が必要で、現在の基準見直しの議論も運行設計条件である「ODD」(本連載で詳細を解説しています)の範囲内です。

 しかし、基準が見直されるとなれば事実上、高速道路の本線では名実ともに「ハンズフリー/フットフリー/アイズフリー」のレベル3を稼働でき、有用性もグッと高まります。

 2021年10月28日、レクサスLSに一部改良が行なわれ高度運転支援技術Lexus Teammate「Advanced Drive」の性能向上が図られました。

レクサスLSが一部改良を実施。安全運転技術がアップデートされた
レクサスLSが一部改良を実施。安全運転技術がアップデートされた

 レベル2までの各運転支援に関する制御ソフトウェアのアップデートが主な内容で、既存ユーザーには無線通信技術「OTA」を経由して、地図データを更新するような手軽さでソフトウェアのアップデートが行なわれます。

 また、LSではすでにレベル3の自動化技術を担保した設計(例/電源システムの冗長性)がとられていましたが、今回の一部改良にあわせて車体左右と後方に3つのLiDARを装着しました。

 一部改良前モデルにも追加するLiDARを見据え、既に設置場所の確保とワイヤーハーネスなどの取り回しは施されていたので、その場所に予定されていたLiDARを搭載したわけです。

 トヨタの燃料電池車「MIRAI」もLSと同じデジタルプラットフォームを使っていることから、LSと同じようにレベル3の実装を踏まえたLiDARの追加が近々行なわれると筆者は予想します。

 ただ、2車にLiDARが追加されたとしても、すぐにはトヨタ/レクサスのレベル3技術は機能しません。では、いつから機能を開始するのかトヨタの技術者に伺ったところ、「レベル3を機能させるには、社会的受容性の高まりが必要であると考えており、現時点では未だその領域に達していないと判断しています」との回答を得ました。

 つまり、レベル3が求めるセンサーの検知能力・電源システムの冗長性・HMI設計などを有する車両は販売するものの、実際には自動運転技術(レベル3)に対する正しい認識が広まるのを待ってから機能させる、ということです。

次ページは : ■「手動運転は残る」と

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