その名も「サイボーグ」 ターボのイメージを牽引した三菱ミラージュの実力と功績

3代目ほどのインパクトがなかった4代目

 その後ミラージュは、1991年に4代目へとフルモデルチェンジ。4代目ではラグジュアリー路線となり、デザインは丸みを帯びた優しい曲線のボディとなった。メカニズムも超低燃費を実現したMVV(リーンバーン)エンジンや純度の高い走りを生み出すリアマルチリンクサスペンション、安全装備の積極採用といった、機能性や快適性の追求が目立った。

 サイボーグはというと、当初は設定されなかったものの、1992年の一部改良で可変バルブタイミング・リフト機構を持つMIVECエンジンを搭載して登場。NAながら175psと出力を向上させたものの、優しいデザインと機能性のイメージが先行して、3代目サイボーグほどのインパクトはなかった。

4代目ミラージュは丸みを帯びた優しいデザイン。途中で追加されたサイボーグはMIVECエンジン搭載で175psとなる
4代目ミラージュは丸みを帯びた優しいデザイン。途中で追加されたサイボーグはMIVECエンジン搭載で175psとなる

三菱らしさを取り戻した5代目、しかしサイボーグに刺激は与えられず

 5代目ミラージュは1995年に登場、4代目からのキープコンセプトながら、新世代のベーシックカーを目指してクリーンでメカニカルなイメージのデザインが与えられた。4代目の柔らかい表情を残しつつも、くっきりと入ったサイドのプレスラインによってシャープな印象となっていた。環境性能と動力性能を両立させた新開発の1.5L DOHCエンジンが採用されたことが、5代目ミラージュの大きなトピックだ。

 サイボーグはというと、4代目のMIVECが継承され、NAのまま。車重が1020kgと軽量であるため走りは十分スポーティだったが、5代目ミラージュにはセダンの「VR-X」グレードがあり、1.8L 直4DOHCターボで最高出力は205psと、こちらの方がサイボーグより刺激的であった。

 当時は、ラリーでランエボが大活躍していた時代。ランエボ2(1994年)、ランエボ3(1995年)と、WRC参戦のためのベースマシンが、毎年のように改良していく陰に隠れ、「ミラージュ」の名がほとんど広がらなかった流れは仕方のないことだった。

5代目ミラージュハッチバック。販売不振で商業的には失敗だったが、走りはスポーティだった
5代目ミラージュハッチバック。販売不振で商業的には失敗だったが、走りはスポーティだった

「ターボの三菱」のイメージを築いた

 4代目、5代目のサイボーグにはターボが設定されず、ミラージュは2000年の5代目終了のタイミングでいったん消滅、12年の空白ののち復活した現行型は、タイで生産されるAセグメントコンパクトへと生まれ変わっている。ターボを搭載した刺激的なホットハッチは、3代目ミラージュのサイボーグが最初で最後だった。

 若者が自分の愛車を持てるようになった時代に登場した、3代目ミラージュサイボーグ。兄貴分のギャランとともに「ターボの三菱」のイメージを築き上げたその功績は大きい。

(編集部注/2012年に国内販売が復活した現行ミラージュは、マイチェンを繰り返して進化を続けており、約10年たった現在もフロントマスクに三菱らしいダイナミックシールドを採用して販売している。

 いま日本販売市場の主役となっているトヨタヤリスや日産ノート、ホンダフィットのさらにひとつ小さいクラスで、1.2Lの純ガソリン仕様のみ。車両本体価格1432,200円~と、なかなかリーズナブルな価格設定で、アメリカの自動車データ分析会社から(セダン版である「ミラージュG4」が)「アメリカで最も中古車価値の高いサブコンパクトカー」に認定されていたりする(2021年11月選出)。

 よいクルマなのだが、いかんせん知名度が低く地味なのが切ない。ここはひとつ(無茶は承知で)アライアンスを利用して日産からe-POWER機構を譲り受けて現行ミラージュへ搭載し、「サイボーグ」グレードを復活させると、往年のファンは大歓喜するのではないでしょうか。)

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