新型レクサスLXのグリルにはフレームのないシームレスな立体構造の巨大なスピンドルグリルが採用された。その圧倒的な存在感に度肝を抜かれた人も多いのではないだろうか。
現行モデルでは新型BMW4シリーズクーペ&M4のキドニーグリルの巨大さが目立っているが、トヨタでその傾向が強まってきたのは初代ヴェルファイアからと言われている。
もともとはアウディが2000年代中盤に進めた「シングルフレームグリル」採用がその走りだったのだが、グリルの巨大さはクルマの存在感を高める一方、そのアクの強さが際立つ。賛否あるこのデザインについて、今後を分析してみた。
文/伊達軍曹
写真/レクサス、アウディ、ベストカー編集部
■新型レクサスLXのグリルはアルファード後期型を超えた!?
2021年10月に世界初公開となったレクサス LXのフロントグリルがすごいことになっている。
近年のクルマはほぼどれもフロントグリルの巨大化が著しいわけだが、それにしたって限度というものはある。現行トヨタアルファードのフロントマスク全体に占める「グリル比率」は、筆者の手動計測によれば約50%であり、巨大化の是非が取り沙汰された新型BMW 4シリーズのキドニーグリルにしても、約30%に過ぎない。
それに対してレクサス LXのグリル比率は、筆者のテキトーな手動計測によれば約55%。……LXはグリル比率が初めて(?)50%を超えた国産車として、歴史にその名を残すのかもしれない。
■デザインアイコンの巨大化は止まらないのか?
まぁそんなテキトーな数字にもとづく与太話はどうでもいいとして、「フロントグリルの巨大化」はいつまで続くのだろうか?
しまいには「ヘッドランプ以外はすべてグリル! 」みたいな世界に行き着くのか? それとも、ある段階で「さすがに大きくなりすぎましたね(笑)」という感じで、一転してコンパクトな方向へと潮目が変わるのだろうか?
もちろん、未来を正確に予言することなど誰にもできないわけだが、「歴史」を知ることで、ある程度の未来予測はできるのかもしれない。ということで、「フロントグリル巨大化の歴史」を簡単に振り返ってみよう。
■グリル巨大化の歴史
今日まで続いているグリル巨大化の端緒は、3代目アウディ A6(2005~2011年)が初採用した「シングルフレームグリル」だった。
車体のデザインを担当したのは日本人デザイナーの和田 智氏で、フロントグリルは、当時アウディのデザインディレクターだったワルター・デ・シルヴァ氏と一緒に手がけたと証言している。
それまでのアウディ車は、左右にわたるフロントバンパーを境とする「ダブルグリル」を採用していたが、アウトバーンでのプレゼンスを高める目的で、つまりルームミラーにその姿が映ればすぐに「あっ、アウディだ! (走路を譲らなきゃ! )」と認識されるように、グリルの形状をシンプルかつシンボリックに進化させたのだ。
また、和田氏の証言によれば、3代目A6のシングルフレームグリルをデザインする際に参考としたのは、アウディの前身であるアウトウニオンが1936年に手がけたグランプリカー「タイプC」だったという。温故知新ならびに原点回帰という意味で、自社のヘリテージ(遺産、伝統)を利用したのだ。
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