■昨年のトヨタは堅調な業績とは裏腹にさまざまな問題・課題が噴出した年だった
振り返れば、昨年のトヨタにはネガティブな材料が積み重なった年となった。ポジティブな話としては、部品不足の影響を他社より抑えて9月の中間決算は円安の追い風もあり、売上高、営業利益、純利益とも中間期として過去最高となった。
中間期としての企業業績は絶好調でも、さまざまな問題が発覚した年でもあった。6月には若手社員の自殺問題が浮上。それが上司のパワハラが原因として労災認定された。トヨタも因果関係を認めて和解したが、豊田章男社長が遺族に直接謝罪したことがメディアに大きく報じられた。
しかも、真夏には五輪開催中の選手村で、トヨタが提供した自動運転中の巡回バスが視覚障害の選手と接触事故を起こして大騒ぎとなった。
また、10月に入り、大口取引先の日本製鉄が特殊鋼材の特許権侵害でトヨタと中国の宝山鋼鉄をいきなり提訴するという 「大事件」も勃発。意地の突っ張り合いで解決が長引くとの失望感から投資家心理を冷やし、足元では嫌気売りが広がった。
また、直接トヨタが関わった訳ではないが「レクサス」店や系列ディーラーによる不正車検が相次いで発覚。慢性的な整備士不足に加え、作業手順の効率化を優先した対応にトヨタ流の経営手法が原因ではないか? とのあらぬ疑いの目も持たれた。
わずか数カ月の間にトヨタ及びその関連企業から不祥事が噴出したことは、当然トヨタの株価にも影響を与えた。
しかし、年の瀬に入ってトヨタがEVの2030年の世界販売目標を350万台に引き上げると発表。12月14日、その年の大晦日で閉館となった東京・お台場のショールーム、メガウェブには発売予定のSUV「bZ4X」など16台もの EVの開発モデルが並べられた。このインパクトは絶大だった。
■大々的なEV戦略の発表やグローバルでの販売好調で一気に「買い」銘柄に変貌!!
その展示車の前で豊田社長は「350万台、30車種を投入しても、前向きじゃないと言われるなら、どうすれば評価されるのか、逆に教えてほしい」と胸の内を訴えた。翌朝には全国紙が1面トップで報道すると、「潮目は変わった」との期待感から買いに動く投資家も増えて「後ろ向き」を払拭するアピール効果はてきめんのようだった。
さらに、新年早々には、2021年の米国市場でトヨタが新車販売台数で米ゼネラルモーターズ(GM)を上回り、海外メーカーとして初めて首位となったほか、国内では小型車のヤリスが4年連続首位だったホンダの軽自動車、N-BOXを追い抜いて、車名別のトップに躍り出た。
そして、ダイハツと日野を含めたトヨタグループの世界販売台数が1000万台を超えて2年連続で首位に輝くなど、明るいニュースが好材料となって投資家の買いを集めていた。
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