「ギラギラフェイス」は正解だった? 新型ヴォクシー/ノア 消えるはずが残った兄弟車の決断

新型ヴォクシーの人気は、先代からの乗り換え需要の多さが理由のひとつ

 某地区を統括するトヨタ系販売ディーラーに尋ねたところ、2月時点での受注台数はヴォクシーのほうが多いという。目標台数はノアが8100台/月、ヴォクシーが5400台/月。販売スタートしたばかりの現時点では、開発サイドの思惑とはやや外れたようだが、今後はどのように変化していくのだろうか。

 水澗英紀チーフエンジニアへ今後の展望を伺ったところ、(2020年5月の)全車種併売にした結果、ヴォクシーの標準が一気に売れなくなり、エスクァイアも売れなくなったという。それまでも(販売台数の)デコボコはあったが、系列店ごとに分けていたことで分散していた人気の違いが浮き彫りになり、お客様がもとめるクルマがダイレクトに見えるようになったそうだ。

 また、水澗英紀チーフエンジニアは、「このミニバンクラスは「顔」で選ぶ方が多い。その中でも、落ち着いたミニバンがいい方、スポーティなミニバンが欲しい方は新型ノアを、独創的な路線を求める方には新型ヴォクシーを用意した。

 新型ヴォクシーを、あえてチャレンジング(好き嫌いが大きく分かれそう)なデザインにしたのは、人とは異なるモデルを求める若者や、ミニバン以外を乗ってきた方が、「今回のヴォクシーはちょっと興味あるな」と受け止めてくれればOK、乗り換えのお客様以外に、新たな顧客が購入してくれれば狙い通り」とも話していた。

 新型ヴォクシーの受注が多いのは、母数が多い先代ヴォクシーからの代替えが理由のひとつだろう。初見ではかなり衝撃的に受け止めた新型ヴォクシーだが、見慣れると絶妙にカッコ良く見えてくるから不思議だ。(メッキ面積を重視した)王道を歩む新型ノア、新たな造形で魅せた新型ヴォクシー、双方のバランスが、今後どのように変化していくのかは非常に注目だ。

トヨタ車体 開発本部本部長の水澗英紀チーフエンジニア。2代目と3代目のノア/ヴォクシー、エスクァイアでもチーフエンジニアを歴任された方で、トヨタの国内ミニバンの第一人者だ
トヨタ車体 開発本部本部長の水澗英紀チーフエンジニア。2代目と3代目のノア/ヴォクシー、エスクァイアでもチーフエンジニアを歴任された方で、トヨタの国内ミニバンの第一人者だ

現時点はやはり「ギラギラフェイス」が正解か

 ただ、前出の某地区を統括するトヨタ系販売ディーラーによると、ティザー写真が出た12月8日直後は、新型ヴォクシーの受注台数の方が7割と、圧倒的に多かったというが、面白いことに、正式発表(1月13日)後は新型ノアが台数を伸ばし、現在は4:6の割合まで戻しているという。フロントフェイスの全貌が見えたことで、ノアに流れた顧客もいたのだろう。

 新型ノア/ヴォクシーを見てみると、新型ノアは横3本の太いメッキラインが入り、80系ノアのフロントグリルをそのまま引き継いだようにも見える。現行アルファード程の壮大さはなく、「ライトなギラギラフェイス」という印象だ。

 一方の新型ヴォクシーは、プレデターやエイリアンのような「生き物が口を開いたようなフェイス」となった。フロントサイドに付いたウネリ模様は「気味の悪さ」すら感じ、人によっては苦手と言うだろう。先代ヴォクシーとは大きく異なり、「異様な雰囲気」すら漂っている。「先鋭的、独創的」というキャッチフレーズにぴったりだ。

 一転、ライバルであるステップワゴンの新型のフロントフェイスは、「原点回帰」したことで、シンプルで清潔感のあるデザインになった。懐かしい顔に寄せたことで、かつてステップワゴンに乗っていた層へアピールすることができるのかも注目だ。

 ミニバンのフェイスの「正解」を見出すのは、なかなか難しい。この一年の間にヒットしていたのは、先代ヴォクシー、現行アルファードあたりだろうが、先代ヴォクシーは、「2018年以降の後期型ヴェルファイア」に近い顔をしていたりもするが、ご存じの通り、ヴェルファイアはこの後期型で販売台数を激減させている。

 ボディサイズ毎に、「正解」が異なるのか、偶然が重なっただけなのか、そもそも正解を見出そうとするのが間違いなのか、分析はなかなか難しいところだが、新型ノア/ヴォクシーが今後、トヨタの思惑通りの売れ行きとなっていくのか、今後の動向が楽しみだ。

新型ノアは横3本の太いメッキラインが入り、80系ノアのフロントグリルをそのまま引き継いだようにも見えるが、今後は販売割合を伸ばしていくのだろうか
新型ノアは横3本の太いメッキラインが入り、80系ノアのフロントグリルをそのまま引き継いだようにも見えるが、今後は販売割合を伸ばしていくのだろうか
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