48Vは、「フル」と「12Vマイルド」の中間
一般的に、マイルドハイブリッドは、エンジンのオルタネーター(発電機)の代わりにISG(スターター機能付きの小型M/G)を搭載しており、冒頭でも触れたように、駆動電圧は、日本車では12V、欧州車では48Vが多く採用されています。
・12Vマイルドハイブリッド
モーターの出力が3~5kW程度に限られるので、回生できる減速エネルギー量は少なく、低速時や加速時にエンジン出力をアシストするのが主な役割です。安価なシステムですが、モーター単独で走行するだけのパワーはなく、燃費向上効果も小さめです。
・48Vマイルドハイブリッド
モーター出力を10~15kW程度まで増大させており、エンジン出力のアシストだけでなく、(システムの仕様に依りますが)30km/h~40km/h程度の低速運転でモーター走行が可能です。コストと燃費向上効果は、フルハイブリッドと12Vマイルドハイブリッドの中間となります。
48Vマイルドハイブリッドは、日本の国内メーカーではまだ採用例がありませんが、欧州では主要メーカーのほとんどが高級車の一部モデルに採用しています。冒頭でも触れたように、2020年、スズキが欧州仕様に限定して48Vマイルドハイブリッドを、スイフトスポーツで採用しました。
「フル」がなかったため、出力の大きい「マイルド」が必要だった
欧州メーカーが、48Vマイルドハイブリッドを積極的に採用しているのは、12Vマイルドハイブリッドを採用する日本メーカーとは異なるいくつかの事情があります。
そもそも欧州メーカーは、2000年頃、シェアが高く燃費に優れたディーゼル車でCO2規制に対応することを優先したことが影響し、現在もフルハイブリッド技術で日本に後れをとっています。
カーボンフリーが強く求められるようになった現在、限られた数のバッテリーEVとプラグインハイブリッドだけでは、直近のCO2排出規制を乗り切ることができないため、欧州メーカーとしてもハイブリッドシステムは必要となっているのですが、フルハイブリッドでなくマイルドハイブリッドを選択しているのは、マイルドハイブリッドはシステムが簡素であることから、開発投資が抑えられるためです。
また、12Vではなく、48Vマイルドハイブリッドを採用しているのは、日本よりも全体的にクルマが大きいことで、高出力のM/Gが必要だったためです。駆動電圧を12Vから48Vに上げれば、モーター出力は単純に4倍になります。それならもっと駆動電圧を上げればとなりますが、直流電源の電圧は60Vを超えると人体に危険なので、特別な安全(漏電)対策が必要。60Vを超えない範囲で、高い48Vが選択されたのです。
燃費以外にも、欧州メーカーが48Vマイルドハイブリッドを進める背景には、48V電源の規格化の推進があります。現在クルマの機能部品は12V駆動ですが、EPS(電動パワステ)、電動ブレーキ、電子サスペンションなど車体系アクチュエーターの駆動電圧も48Vにすれば、駆動電流を小さくできて高効率化が可能。すでに欧州の部品メーカーは、駆動電圧の48V化を積極的に進めているのです。
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