アルシオーネは2年早ければ売れていた?
アルシオーネの後継として1991年秋に発売された、異色の4WDのスペシャルティカーがアルシオーネSVXだ。
デザインを手がけたのはイタリアの鬼才、ジョルジェット・ジウジアーロである。エンジンは、3.3LのEG33型水平対向6気筒DOHCを搭載した。これに電子制御4速ATを組み合わせ、ドラマチックな加速を楽しませてくれる。
4WDシステムは、電子制御油圧多板クラッチによって前後輪のトルク配分を50対50まで自在にコントロールする、不等&可変トルク配分電子制御4WDのVTD式4WDだ。
これにビスカスLSDを組み合わせ、路面と天候に関わらず安定した走りを披露した。「バージョンL」には4輪操舵の4WSも搭載している。
ポルシェ並みに上質でエキサイティングな走りを楽しめたが、販売は低迷した。バブルが弾け、スポーツモデルから心が離れている時期だったこともあり、売れなかったのだろう。
デビュー時は強気の販売価格だったが、当時のスバルには高額のスペシャルティカーを売る力がなく、売り方も下手だったから販売は伸び悩んでいる。
途中でカンフル剤として特別限定車を連発した。が、インプレッサ WRX STIほどの神通力はないから、長期在庫となっている。
もう2年早くデビューしたら、結果は違っていただろう。皮肉なことに、今になってファンからの評価は高くなっている。
良さが訴求しづらかった? 軽とは思えない意欲作、ホンダ Z
第2世代のホンダZがベールを脱ぐのは、軽自動車の規格が変わった1998年10月である。初代Zはスポーティなスペシャルティカー的なルックスだった。
これに対し2代目は、ハイトワゴンのように背の高い2ボックスフォルムを採用し、後席も広い空間を確保している。ただし、5ドアではなく3ドアだ。
度肝を抜いたのは駆動方式とエンジンレイアウトである。660ccの直列3気筒SOHC4バルブ(とターボ)エンジンをアンダーフロアに搭載するミッドシップ、しかもビスカスカップリングにセンターデフの4WDとしたのだ。
それだけではない。前後の重量配分50:50を実現するために、エンジンを縦置きレイアウトとし、フロアを低くするためにこれを横に寝かせて搭載した。
リアサスペンションはド・ディオン式だ。最低地上高は195mmを確保しているから、雪道やダートも苦にしない。
軽自動車とは思えないほど金のかかった設計で、エンジニアの意気込みもハンパじゃなかった。販売価格も買いやすい戦略価格を打ち出している。
ホンダらしい独創的な車だったが、発売してみると販売は伸び悩んだ。その理由は、卓越したメカニズムがユーザーに伝わりにくかったことと、使い勝手の悪い3ドアモデルだったことにある。
また、デザインも平凡で、華やかさに欠けていた。セールスマンもライフのほうが売りやすいから、Zは放ったらかしにしている。
そのため発売から3年で生産打ち切りを決め、姿を消していった。今の時代ならヒットしたかもしれない偉大な失敗作だ。
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