2017年、マツダは主要6車種すべての年次改良を行なった。
年次改良とは何か。これまで国産車では、約4年ほどの周期でフルモデルチェンジが行われ、その間に大きなマイナーチェンジが挟まれるサイクルが通例となっていた。だが最近は小規模な仕様変更をほぼ一年ごとに繰り返す車種・メーカーも増えてきており、これが「年次改良」と呼ばれている。
マツダでは、厳密にはこれを『商品改良』と呼んで、「適切なタイミング(ほぼ年1回のペース)」で実施しているという(なお、この『商品改良』のなかでも外観デザインの変更を伴う装備や機能変更を『ビッグチェンジ』と呼ぶそうだ)。
言葉の定義はここまでにするとして、さてこの「年次改良」、発表当日までそれが一般に知らされることはない。それ自体は当然と言えば当然なのだが、たとえば冒頭の2017年の6車種年次改良、デミオについて言えば、4月と11月、1年に2回もの年次改良が行われている。cx-5についても、2017年8月と2018年2月の年次改良を考えればやはり半年に1回ということになる。こうなると「もうすこし待っていれば…!」と悔しい思いをした人の声に耳を傾けたくなるというもの。
実際のところ我々ユーザーにとって、年次改良は歓迎すべきことなのかどうか。自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に話を聞いた。
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部
表・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年8月10日号
■主要7車種を毎年チェンジするマツダの戦略
かつてのマツダは、ミニバンのプレマシーなども含めて幅広い車種を揃えたが、今はOEM車を除くと乗用車は7車種に限られる。種類が少ないことはクルマを大量に売る上では欠点になり、マツダ車の国内販売台数は先代(初代)CX-5の発売前に比べると減っている。
そのいっぽうで、車種の数やカテゴリーを減らせば、エンジンやプラットフォームを共通化しやすい。デミオとアクセラでは、ボディサイズが異なるためにプラットフォームも違うが、開発コンセプトや基本的な形状は共通だ。
そうなると例えばアクセラが新技術のGベクタリングコントロールを採用すれば、あまり時間を置かずにデミオやアテンザにも搭載できる。各車種を偏りなく進化させ、商品力を常に高く保てる。
そこで今のマツダ車は、改良を頻繁に行う。内容は安全装備の充実から、エンジンや足回りの改善まで多岐にわたるが、ほぼ毎年手を加える。これが生き残りを賭けた戦略の柱になっている。
商品が頻繁に刷新されることは、ユーザーにとってはメリットだ。特に最近は安全装備の進化が著しく、改良を怠ると、同じメーカーの商品同士でも格差が生じてしまう。それがマツダなら差が付きにくい。
ただしCX-5のように、半年ごとに装備の見直しやメカニズムの変更を行うといつ買えばよいのかわからないという不満が生じる。ちなみに昔の日本車は、4年ごとにフルモデルチェンジ、その2年後にマイナーチェンジを行った。時期も大体決まっていたから不満は生じにくかった。
またアテンザは2012年の発売だから、CX-5と同じくフルモデルチェンジすべきだが、従来型を継続生産。そこは残念だが、今は他メーカーでは10年前後にわたって作り続ける車種も多い。アテンザは2018年に新開発タイヤを採用するマイナーチェンジを実施しており、手厚いケアをしている部類に入る。
【編集部による考察】
車種を絞ってそれぞれのモデルサイクルを(小さい改良を積み重ねながら)長くとる、という経営戦略は、デザインと製品によほど自信がないとできない。マツダのそうした姿勢は今のところユーザーに支持されており、2010年代前半に比べると販売台数は減っているものの、中古車価格相場や値引き販売の軽減、ブランドイメージの向上など、じわじわとマツダの経営全体の底上げができているように思う。
ただ一点寂しいのは、やはり華やかなニューモデルのデビューが少なくなることだ。2018年、マツダは大きな新型車発表予定が一車種もない(最大の案件は6月発売となったアテンザ/アテンザワゴンのマイナーチェンジ)。当サイトの予想では2019〜2020年にはアクセラ、アテンザ、そしてCX-4導入と勝負をかける見込みで(関連記事)、今年はなんとかあいだをつなぐ年、という位置づけのよう。
この「選択と集中」が成功するのかどうか。当サイトも注目していきたい。
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