■1990年代、ホンダはミニバンで成功を収める
思えばホンダのスポーツカーは、常に“斜め上”を行っていて、いわゆるスポーツカーと聞いてイメージするようなオーソドックスなスポーツカーというのはむしろない。
やることが極端なところもホンダのスポーツイメージを牽引しているに違いない。
そんなホンダは、1994年発売のオデッセイのヒットを転機に、以降もステップワゴン、ストリーム、S-MXなど、フィット、最近ではNシリーズなど、実用車立て続けにヒットさせる。
逆にタイプRブームは終焉を迎え、F1からも撤退し、V10を積んで出る予定だった幻のNSXのことなどもあって、すっかりミニバンや最近では軽自動車が主体のメーカーになったようなイメージもあるが、それはたまたまミニバンや軽自動車であまりにも成功してしまったからにすぎないように思う。
スポーツカーを手がけるのが難しい局面を迎えた時期にもCR-Zのようなクルマを出したあたりからも、ホンダの根底に流れる精神がうかがえる。
また、モータースポーツにかける情熱やスタンスが日本の他のメーカーとは一線を画しているのもホンダならではである。
F1についても、中断期間はあったものの、体制を整えて復帰をはたしたのは相当なことだ。あとは成績がついてくれば申し分ない。
その他、2輪はもちろん、4輪でもINDYや国内外のツーリングカーレースにも積極的に参戦して好成績を収めている。
過去の栄光だけでなく現在の一連の取り組みもホンダのスポーツイメージに寄与していることはいうまでもない。
市販車についても現時点では、NSX、S660、シビックタイプRという、いずれも特徴的なスポーツカーをランアップしているのはご存じのとおりだ。
NSXは、価格も性能も日本車の常識を超えた、はるか高嶺の花になったのはご存知のとおりだが、こういうクルマをつくろうと考え、それを実現してしまうところがホンダらしい。それはホンダジェットにも通じるものがある。
一方のS660は、スポーツカーの原点といえる純粋に乗って楽しいクルマをと企画されたものだ。いろいろなアイデアがあった中で、こうした案が選出されるのも、これまたホンダらしい。
あるいはシビックタイプRも、FF世界最速の座をかけてライバルとしのぎを削る姿には、当初はなぜFFで? という気もしたのだが、ホンダの手持ちのリソースで実力の高さを世界に向けて証明できるものとして、大きな価値がある。
こうして見ると、やはりいわゆる”普通”のスポーツカーがないところが、かえってホンダらしく思えてくるほどだ。
ビジネスとしては実用車が主体となるのは、今の時代は当然だ。そんな中でも、こうして際立つスポーツカーを企画し、世に送り出せる素地があるところが、ホンダのユニークセールスポイントに違いない。
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