高級セダンはFRじゃなきゃダメなのか?【FF高級セダン失敗史】

■ニッポンのFF高級セダン失敗史

1985年10月〜1986年9月まで販売されていた初代レジェンド。ホンダは自社ブランド初の高級セダン、レジェンドを当時、業務提携関係にあったBL(ブリティッシュ・レイランド(後のローバー)」と共同開発。ローバー側は825、827スターリングだった

歴代の日本車を振り返ってみると、新しい価値観を提案したFF高級車が何台かあったが、残念ながらいずれも成功したとは言い難い。

まず筆頭に挙げられるのは、ホンダが初めて高級車セグメントに挑戦した初代レジェンドだ。レクサスより4年も早く、アメリカ市場で“アキュラ”という高級 車ブランドを立ち上げ、その第一号車としてデビュー。横置き90度V6の高回転型エンジンや、後に追加された可変ジオメトリーターボ(ウイングターボ)な ど、技術的にもこの時代のホンダらしくユニークな見所が多かった。

レジェンドは1990年デビューの第2世代からレイアウトをガラッ と変更して縦置きV6のFFとなるのだが、当時は「縦置きにするなら、いっそFRにすれば?」と首をかしげたことを思い出す。業界関係者の多くはスバルの 例から「これはきっと4WD化の布石に違いない」と予想したのだが、これも空振り。

結局、レジェンドは2004年の4代目でSH-AWDとして4WD化されるのだが、その際にV6はバンク角60度で全面新設計され、なおかつエンジンは横置きに戻されている。

というわけで、ホンダはいまだにFR高級車に進出していないのだが、このレジェンドの迷走がトラウマになっているような気がしないでもない。

■世界初のミラーサイクルエンジンを搭載したユーノス800

1993年10月、マツダ5チャンネル化によって誕生したユーノスのフラッグシップセダン。世界初のミラーサイクルエンジン、V6、2.3L(220ps/30.0kgm)を搭載

マツダもFF高級車では痛い目にあっている。1993年にデビューしたユーノス800は、世界初のミラーサイクルエンジンや凝った4WS機構など、技術的には見どころ満載の意欲作だった。

走っても、リショルムコンプレッサーで過給された2.3LV6エンジン(220ps/30.0kgm)はスムーズでトルクフル。ハンドリングと乗り心地のバランスも良く、当時のFFセダンの中でベストなシャシーと評価が高かった。

しかし、この時代のマツダは身の丈に合わない5チャンネル構想に打って出て壮大に自爆。ユーノスチャンネル自体が消滅して、後期には車名も1997年7月にはミレーニアと改名せざるを得なくなり、一代限りで2003年に生産を終了することとなる。

現在、マツダは高級車セグメントへの再チャレンジとして直6FRを開発中と噂されているが、やっぱりFF高級車失敗のトラウマが残っているように思われる。

■なかなか後が続かない……、三菱ディアマンテ

1990年8月〜1994年12月。当時のBMW風な逆スラント型ノーズをはじめとするスポーティな3ナンバー専用ボディに、マルチビジョンや三菱インテリジェントコックピットシステム、電子制御サスペンションに4WSなどのハイテク装備を満載。排気量2Lから4Lまでの自動車税の見直しに合わせ、税区分に合致する3種類のV6エンジン(3L、2.5L、2L)を投入し、比較的低い価格帯でFF以外に4WDも選べた選択肢の広さもあって好評を得て1990年-1991年日本カー・オブ・ザ・イヤーも獲得

三菱ディアマンテもFFで高級セダン市場にチャレンジしたクルマだが、初代はそこそこの成功作となったものの、やっぱり後が続かなかった。

ディアマンテの基本的な成り立ちは、当時のギャランのプラットフォームを拡大してV6を搭載したものだが1989年の自動車税制改正にうまく発売タイミング があった結果、お手頃価格の2・5Lグレードがヒット。バブルの最後の波に乗れたことで参入の難しかったFF高級車市場に一定のシェアを築くことに成功 する。

また、三菱らしく高級セダンでは珍しかった4WDバリエーションも充実。パジェロの大ヒットでイケイケだったこともあって、4WDの三菱というブランド戦略もディアマンテ人気を大いにアシストした。

しかし、1995年1月デビューの2代目はバブル崩壊後の景気低迷をもろにかぶって売り上げ低迷。2000年のリコール隠し問題など、三菱ブランド自体が大きく毀損した結果、2005年にひっそりとその生涯を終えている。

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