ホンダが、元気がないと言われて久しい。2017年の世界生産台数は過去最高だったし、CMから伝わってくる、ものづくりに対する情熱ははっきり言ってカッコイイし、そうしたイメージに惹かれたのか、就職人気ランキングでも上位の常連だ(なにより若い世代に「ホンダが伝わっている」ということでもある)。
N-BOX、ヴェゼル、シビックタイプR……と、自動車の興味のない人だって知っているクルマがずらりとある。でも、やっぱり元気がないと言われてしまう。なぜなんだろう?
ここでは、今ホンダについて多くの人が抱えているだろう、様々な疑問について、自動車評論家の方々に突っ込んで聞いてみた。もしかすると、ホンダがパッとしない本当の理由が見えてくるかもしれない。
※本稿は2017年のものです。
文:ベストカー編集部 写真:HONDA、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2017年11月26日号
【ギモン01】 なぜNSXは初代のように熱狂されないのか?
これはホンダのせいというよりも社会状況が変化してしまったことだと思う。初代NSXがデビューした1990年はバブル経済まっただなかで、一般の人が高いモノを買うのに憧れていた時代だったけど、それに対して現在は不況が長期にわたって続いたことで、消費マインドそのものも下がり続けてしまっている。
象徴的なのがフェラーリやランボルギーニといったスーパーカーの存在で、ふつうの人にはまったく興味のないクルマになってしまった。ブランド力はあるのにね。この2社よりもブランド力の劣るNSXの場合はもっと厳しい。この状況を打開するなら年2%のGDP成長率が10年続くくらいの好景気にならないと無理。その頃に次の3代目NSXが出ているかどうかは別だけどね。
(清水草一)
【ギモン02】 なぜホンダの国内販売は上向かないのか?
フィットなどi-DCDのリコールが響き、緊急ブレーキにしても歩行者対策が後手に回ったこと、それとデザインのまずさが挙げられる。
特にステップワゴンは歴代「地味→派手→地味」パターンを繰り返す。3代目は背を低くしてスタイルを地味にし、先代型では派手めのスタイルに変更、現行型デビュー時は地味にして先般のモデルチェンジでスパーダを逆に派手にした。理由を開発陣に聞くと「オリジナリティを出したいから」と答える。そもそもマーケティングを理解していない。
あとは軽がホンダのなかでも売れてしまっていることだけど、軽を中心とした実用志向ユーザー向けモデルは着実に売れても爆発的な売れゆきまでは期待できず、こういった実用車はトヨタが強い。
さらに販売面では2007年にホンダカーズに集約してメガディーラー化し、小規模店をなくしてしまったことで客が離れた。
(渡辺陽一郎)
【ギモン03】 なぜ渾身の3モーターハイブリッドが話題にならないのか?
ホンダのなかで技術的には目を見張るべきものの代表格が3モーターハイブリッド。ただ、そもそもNSXはスーパーカーだし、レジェンドは700万円にも迫るフラッグシップサルーン。構造上、高コストとなるため、この価格帯のモデルにしか採用できない理由はわかるけど、プリウスのTHS2のように売れて広まらないとダメってことだと思う。
やはり、技術が優れていても“売れてナンボ”の世界。昔、マツダがミラーサイクルエンジンを搭載したユーノス800を出したけど、これも技術的には先進的だったものの、売れなくて結局は消えていった。いくら技術がスゴくても商品力の向上につながらなければ意味がない。そういった意味では、この3モーターハイブリッドがせめてオデッセイやアコードにまで降りてくれれば、また違ったんだろうけどね。
ホンダらしさを垣間見せる「暴走」が違った場所で起きてしまったのが、3モーターハイブリッドだと思う。もったいないからこのシステムをランボルギーニあたりに売ったらいいかもね。
(鈴木直也)
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