クルマはどんな状況なら炎上・爆発するのか?

 韓国でBMWの車両火災が社会問題となっている昨今、日本でも先日(8月21日)首都高の事故で分離帯に衝突したクルマが炎上、「爆発音がした」というニュースが飛び込んできた。

 クルマの炎上事故というのは、そこそこの頻度で発生している。

 では爆発事故はどうか? ハリウッド映画でよく見かけるように、「ボカーン」と爆発する…なんてことはあり得るのだろうか? もしクルマが爆発するのであれば、当記事トップ画像にあるように、燃えるクルマを背に悠長に歩いていたら危ないのではないか??

 以下、クルマのメカニズムに詳しい自動車ジャーナリストの鈴木伸一氏に「クルマはどんな状況になったら炎上したり爆発したりするのか?」を伺った。

文:鈴木伸一 写真:Adobe Stock


■車両火災の原因の多くは「置き忘れ」?

 平成29年版の消防白書によると、クルマの車両火災は、平成27年度に4,188件、平成28年で4,053件と、1年間に約4000件以上も起こっているという。

 その出火件数を原因別にみると、排気管によるものが681件(16.8%)と最も多く、次いで放火が440件(10.9%)、交通機関内配線が392件(9.7%)の順となる。

 そのもっとも多い「排気管による発火」。平成21年度とちょっと古いが、自動車メーカーから報告のあった事故・車両火災をまとめた国土交通省のリポートに詳細が見て取れる。この時点での事故・火災の件数は年間で1,138件。その内訳は事故154件(13.5%)、火災984件(86.5%)で、火災72件を分析した結果、乗用車32件、軽乗用車19件と乗用車が全体の約7割を占めるという。

クルマの炎上事故は思っていたよりも頻繁に起こっている。エンジンルームに可燃物がないか、頻繁にチェックしたほうがよさそう

 そして、原因別では可燃物(ウエス=機械類の油や汚れを拭き取る布等)の置き忘れ56件、枯れ草7件、小動物が持ち込んだ可燃物4件、鳥類が持ち込んだ可燃物4件と、全体の約8割がエンジンーム内に置き忘れた可燃物等による火災にあったというのだ。

 エンジンオイルが付着したウエス等の可燃物の最低発火温度は300〜350℃。一般市街地走行でもエンジンの高温部がこの温度に達することがあり、高速道路等の登坂路走行直後のサービスエリア駐車といった排気系温度が高くなった状況下なら容易に達し、発火する危険性はさらに高まる。

 この置き忘れたウエス、発火前に焦げた臭い等の異臭が室内で感じられ、最低発火温度前後から始まって発火後2〜3分が著しいとのこと。走行中に焦げくさい異臭が漂いだしたら要注意! ただちに安全な場所にクルマを停車させて、確認する必要がある。

■バッテリーの取り扱いには要注意!!

 さて、車両火災の原因はこれ以外にも「燃料漏れ」や「オイル漏れ」に起因するもの、バッテリーのターミナルが緩むことで発生する「ショート」。フロントウインドウに吊るしたアクセサリーの透明吸盤が凸レンズ効果で太陽光が集光。部分的に高温箇所を作り出すことで発火に至るなど様々。

 つまり、事故が引き金というより、メンテナンスや使用方法が適切でなかったために発生しているケースが多々あるのだ。

 ちなみに、車載バッテリー(鉛バッテリー)は走行中、消費した電気を補うため常に充電状態にあり、満充電時には行き場の失った電気によってバッテリー液が電気分解されて酸素と水素が発生する。

 このため、一般的な液入りバッテリーは密閉状態だと破裂してしまうため、液栓に空気孔が設けられており外部に排出される構造になっている。

 つまり、バッテリー周辺には水素ガス(純粋な酸素も)が溜まっている可能性があり、取り扱いを誤ると引火爆発の原因となるわけ。

 筆者は過去にそのバッテリーの爆発を身をもって経験している。若かりし頃バイク整備でフレームの不要部分をディスクグラインダーでカットしていた際、垂れ下がっていたバッテリーのリザーバーホースから火花がバッテリー内部に逆流。目の前で突然爆発したのだ。

 頭の中に「キィーン」という音がしばらく鳴り響き、しばし呆然とした。幸いにもメガネをかけていたため失明は避けられたが、バッテリー液(劇薬の希硫酸)を被ったツナギはボロボロになってしまった。

 車両バッテリーが爆発するなど、一般ユーザーは考えてもいないはず。それだけに注意が必要。定期点検等の日頃のメンテナンスは怠ることなく、キッチリ行うことが大切だ。

■簡単には爆発しない。……しかし

 クルマで「爆発」と言えば真っ先に頭に浮かぶのがガソリンタンタンクだろう。

 映画で崖からクルマが転落するシーンでお約束の派手な爆発。あれは現実に起こりえるのだろうか。

 実は漏れ出た燃料にスパークした電源や衝突時の火花によって火災が起きる可能性はあるものの、クルマはそんな簡単には爆発などしない。「クルマは爆発するかのか? しないのか?」と問われれば「爆発する可能性はある」が、そのためには一定の条件が整う必要があるからだ。

 2015年にナショナルジオグラフィックが『「ガソリン満タン」の車は爆発しない 大爆発する車はどれ?』というクイズを公開している。ガソリンが「タンクは空」、「半分」、「1/4」、「満タン」の4種類のクルマを用意。「このうち大爆発するのはどれか?」とクイズ形式で視聴者に問いかけ、理論立ててその理由を解説していくという動画で、発火装置を燃料タンク下部に仕掛けそれぞれ発火させている。

 その結果、「タンクが空」の車両のみ派手に爆破炎上した。

 キーワードは「15:1」。

 いわゆる理論空燃費で、常温で気化するガソリンは燃料1に対して空気が15(厳密には14.7)の比率になったとき、もっともよく燃焼する。

 つまり、爆発するためには適切な酸素量が必要で、満タンだとガソリン濃度が高すぎ空気も足りないため爆発しなかったのだ。そこで、動画では「走るときは満タンで!」という結論で終わっている。

■大きな事故に遭ったらイグニッションをオフに

 とはいえ、事故の状況によっては燃料タンクや燃料ラインが破損してガソリンが漏れ出し、その周囲の空間でたまたま爆発に適した空燃費になることも考えられる。

 また、爆発に至らないまでも、火災の危険は確実につきまとう。衝突発火による火災は,衝突時の衝撃火花や車両の配線から発生した火花がガソリン等に着火し,出火する事例が多くみられるからだ。

 このため、必ずしも「満タンなら大丈夫」とは言い切れないのが現実。

 もしもエンジンルームやトランクがひしゃげるほどの大事故に遭遇した際は、イグニッションキーをオフにして車両の配線の電気を遮断することが大切! そして、ガソリンの臭気が漂ってきたときは、一刻も早くクルマから離れることが自身と家族の安全のために重要となる。

 自身は安全運転であっても、不定の輩が飛び込んでくるいわゆるもらい事故の危険は常につきまとう。万が一のときのために、このことはキッチリ頭に刻み込んでおきたい。

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