バッテリー容量も「環境を考えて」
一方で、MX-30は、マツダの電動化戦略のベースモデルとして開発されたモデルでもある。国内仕様ではまず24Vマイルドハイブリッドのパワーユニット「e-SKYACTIV G」が用意され、2021年1月末には、バッテリーEVの「MX-30 EV MODEL」が追加された。
ホイールベース内のフロア底部にリチウムイオンバッテリーを搭載し、フロントモーターで前輪を駆動する。総電力量(バッテリー容量)は35.5kWh、一充電あたりの走行距離はWLTCモードで256kmというスペックだ。
長距離移動をするには、かなり心許ない航続距離だが、マツダの説明によると、LCA(ライフサイクルアセスメント)の評価によって、この容量を決めたという。バッテリーEVは、走行中のCO2排出量は「ゼロ」だが、バッテリーの製造過程や廃棄まで含めたトータルでの環境負荷を考慮すると、現在の技術では、この容量でなければ総合的にCO2排出量が増えてしまう計算になる、とのこと。ここでも「環境にやさしい」を最優先に決めたようだ。
マツダの安全思想に基づき、ワンペダルドライブは採用していないが、MX-30 EV MODELには、ドライバーのアクセル操作やブレーキ操作に応じて出力やブレーキ特性を適切にコントロールする協調制御や、より正確に車速をコントロールするために、モータートルクに同期したサウンドをつくることなど、バッテリーEVであってもマツダらしく「人馬一体」を体験できる工夫は、随所に散りばめられている。
見た目でよさが分からない
ボディサイズもちょうど良く、つくり込みも素晴らしいMX-30だが、ネガティブな要素もある。例えば、フリースタイルドア。実用的とはいいにくく、リアを単独で開くことができないドアは普段使いで面倒くさく感じてしまうだろう。2人乗車が基本であれば問題ないが、ファミリー層の選択肢にはなりにくい。
また、親しみやすい表情と柔らかなデザインもやや弱い。「カッコよい系」が多いマツダ車の中で、「癒やし系」を推したいことは分かるのだが、所有欲を満たしてくれるかどうかとなると、やはりカッコいい方を選んでしまう。
MX-30の魅力は、「意識が高い」ことだ。サステナブルな素材と「自由らしさ」を表現した室内空間、LCAの評価で決定されたバッテリー容量など、地球環境のずっと先を見据え、カーライフの今後のあり方を考える、という見た目だけではすぐに伝わらないところこそが重要であり、そういう発信力を持つという意味では、意義深いモデルといえるだろう。
ただ、やはりクルマにおいて「見た目」や「わかりやすさ」は重要。サステナブルが注目されるなか、MX-30も、あとちょっと、押しの強いフロントフェイスが与えられれば、いっきに注目が集まることが考えられる。このMX-30の販売状況をマツダがどう考えているかはわからないが、売れることで発信力も一気に高まる。次のマイナーチェンジが楽しみだ。
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