時代とともに宮型から洋型やバン型へ
100年以上の歴史を持つ霊柩車には、2つの大きなターニングポイントがありました。
・大隈重信の国葬による宮型霊柩車の普及
一つ目は、1922(大正11)年の大隈重信の国葬です。約30万人が参列した大規模な葬式で、この時小型のトラックの上に豪華な白木の御輿を乗せ、そこに棺を納めたそうです。これが、宮型霊柩車が一般市民にも普及するきっかけになりました
・昭和天皇の大喪の礼
二つ目のターニングポイントは、1989(昭和64)年の昭和天皇崩御の際、日産(プリンス)ロイヤルの洋式霊柩車が使われたことです。これを機に、宮型霊柩車が減り始め、洋型霊柩車が主流となりました
霊柩車専門メーカーまたは特装車メーカーによって製造される
霊柩車は、申請が必要な事業の営業車に該当し、タクシーや運送用トラックと同じ緑ナンバープレートであり、デコラティブな飾りを付ける、車体を延長する、リムジン化するなど大幅なサイズ変更することが多いので、構造変更届が必要です。したがって霊柩車は、警察車両や救急車、消防車と同じ特殊用途自動車に該当する8ナンバー車となります。
霊柩車を運営する場合は、「一般貨物自動車運送事業(霊柩限定)」としての許可を受ける必要があり、霊柩車は事業者から選任された一種免許を所持する運転者しか運転できません。旅客自動車として乗客を運ぶタクシーやバスのドライバーが所有する2種免許は必要ありません。霊柩車は、人ではなくご遺体(モノ)を運ぶという考え方です。
霊柩車は、オーダーメイドで一般のクルマを改造して製造されます。例えば、クルマの後部を切断・延長して、内部に棺を納めるためのレールを敷き、その上にあらかじめ造っておいた延長部や装飾部を取り付けることで完成させます。
これらの作業は、自動車メーカーではなく、霊柩車専門メーカーや特装メーカーが行います。特に、宮型霊柩車の装飾には高い技術が必要なので、熟練の技術者が製造しています。豪華な宮型霊柩車の草分け的な存在であった米津工房やセガワ(いずれも倒産)などは、芸術的な宮型霊柩車を製造していました。
一方で、洋型霊柩車が主流となった現在は、個性的な乗用車を手掛ける光岡自動車や洋型のパイオニアのTRG、カワタキ、オートウェルなどがシェア争いをしています。
最近の洋型霊柩車のベース車は、メルセデス・ベンツのEクラスやトヨタのクラウンなど、高級車のリムジンが使われることが多いです。また最近人気のバン型では、ホンダのオデッセイやトヨタのノア、日産のクリッパーバンなど様々なミニバンが使われています。バス型霊柩車では、日産のシビリアン、日野のリエッセなどが好まれて使われています。
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冒頭でも触れましたが、人間が最後に乗るクルマ、それが霊柩車です。最近は、様々なクルマをベースにした霊柩車があるので、自分好みの霊柩車に乗りたいと生前に言い残すのも、アリかもしれませんね。
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