凸版印刷は2022年5月16日、輸送中の温度を記録することができる「温度ロガーラベル」を開発したと発表した。
従来の温度ロガー機器は、価格や回収性などに課題があったが、厚さ約1mmのラベルが自動で温度を測定・記録することで、梱包毎の温度管理や、輸送後に回収しない「ワンウェイ」での利用など、これまでにない使い方が可能になった。
日本国内で冷蔵・冷凍車による低温輸送(コールドチェーン)が事業化され始めたのは1960年頃だ。今では食品から精密機器、医薬品など、高い輸送品質を維持するためには温度管理が欠かせない。
新型コロナウイルスのワクチン輸送などを通じて、国際的な長距離コールドチェーンの重要性が広く認知された。安価な温度ロガーラベルは、国際物流におけるサプライチェーンの最適化にも貢献するゲームチェンジャーとなるのだろうか?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/凸版印刷・フルロード編集部
温度を記録するラベル
凸版印刷株式会社は温度を一定時間ごとに測定・記録し、無線通信により温度の履歴をデータベースに転送できる薄型カードサイズの「温度ロガーラベル」を開発した。2022年6月に発売する。
外形寸法(幅*高さ*厚さ)は 85.5 * 54 * 1 mm と、たいていの荷物に添付できるサイズだが、生鮮食品の国際物流など、これまでは難しかった長距離輸送中の梱包毎の温度管理を実現し、品質保持を支援する。
実証実験では、日本から中国への日本酒の輸送において、温度を30分ごとに測定・記録し続けるツールとして採用された。
専用機器を使う従来の温度ロガーは価格が高く、長距離輸送では回収が困難になるなどの課題があった。ラベル自体が温度を記録し、操作パネルの実装や電池交換を前提としないことで大幅に価格を低減するとともに、回収も不要となった。
高い輸送品質が求められる長距離国際物流で活躍しそうだ。
読み取りは専用アプリで
温度ロガーラベルは、貼付された荷物の表面温度の変化を、任意のタイミングで自動的に記録し続けるもの。5m程度の長距離通信が可能な「UHF帯」と、スマートフォンへの搭載が進む「NFC」の2種類の周波数帯に対応する。
経由地や最終目的地などで専用アプリケーションを使って読み取ることで、出荷からその時点までの「ログデータ」(日時と温度などの記録)と読み取り場所などの「トレーサビリティ情報」が、専用のクラウド型管理システムに転送される仕組みだ。
ラベルには使い切り型のバッテリーを搭載し、データダウンロード用の端子や表示用ディスプレイを省くなどシンプルな構造を採用した結果、既存の「温度ロガー機器」と比較して10分の1以下という低価格での提供が可能となった。
食品の長距離輸送では通常の物流とは違い、厳格な温度管理が求められる。。特に、肉や魚、野菜などの生鮮食品、乳製品や総菜などの要冷蔵食品は、鮮度の維持と品質劣化の防止のために、商品ごとに設定された温度で輸送を行なうことが必要となる。
輸送時の温度を管理するツールとして、一定間隔で温度を測定し記録する温度ロガー機器はこれまでにも市販されている。それらは1台当たりの価格が高価なため、すべての梱包に装着するにはコスト面での課題があり、使用後の回収にかかる手間なども導入にあたっての障壁となっていた。
そのため、国際輸送など長距離にわたる温度管理が求められるシーンでは、使用後に回収する必要がない、低価格な温度ロガーの需要が高まっている。こうした背景から凸版印刷は「ワンウェイ」で利用できる温度ロガーラベルを開発した。
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