ヴェルファイア&アルファードがなぜ高級ミニバン市場で一強なのか

ヴェルファイア&アルファードがなぜ高級ミニバン市場で一強なのか

今は新車として売られるクルマの約37%を軽自動車が占めており、「価格の高い大きなクルマは売れない」といわれる。

ところがトヨタのアルファード&ヴェルファイアは別格だ。全長が4900mm、全幅は1800mmを軽く超えて、売れ筋グレードの価格は370〜500万円だが、販売は好調だ。2018年上半期(1〜6月)の登録台数を1か月平均にすると、トヨペット店の扱うアルファードは4568台、ネッツトヨタ店が売るヴェルファイアは3781台に達した。この台数はトヨタパッソやハリアーと同程度だ。

そして姉妹車を合計すると8349台だから、ミドルサイズミニバンのトヨタヴォクシー(姉妹車は含まない)よりも多く、日産セレナの9349台に迫る。アルファード&ヴェルファイアは、トヨタの国内販売を支える基幹車種となっている。

これだけ高くてこれだけ売れるなら、強力なライバルが現れてもおかしくない。しかしこの「高級ミニバンカテゴリー」は、長くヴェルファイア&アルファードの独走状態が続く。

なぜヴェルファイア&アルファードだけが好調に売れるのか。ライバル各車はどういう状況なのか。その理由を考えたい。

文:渡辺陽一郎


■ライバルの状況を分析しよう

まず筆頭に挙げられるのは、アルファード&ヴェルファイアとライバル車で商品力を比べた時に、後者が圧倒的に弱いことだ。アルファード&ヴェルファイアの1人勝ちになった。

ライバル車は、全長が4800mm、全幅が1800mmを超えるLサイズミニバンで、日産エルグランド、ホンダオデッセイ、同じトヨタのエスティマが該当する。この3車種はかつて販売が好調な時期もあったが、今は大幅に下落した。

■日産エルグランド

日産・エルグランド(現行型発売は2010年8月)

2018年上半期の1か月当たりの平均登録台数は668台だ。アルファードの4568台、ヴェルファイアの3781台に比べると圧倒的に少ない。

一番の敗因は、Lサイズミニバンで重要な3列目のシートが狭いこと。床と座面の間隔が不足して座ると膝が持ち上がり、窮屈な姿勢になる。

さらに3列目を格納する時は座席を下側に畳むから、左右に跳ね上げたり反転させる方式に比べて、床が高まってしまう。重い荷物を高い位置まで持ち上げる必要があり、荷室高も足りないから自転車などを積みにくい。

エンジンは直列4気筒2.5LとV型6気筒3.5Lのみで、アルファード&ヴェルファイアのようなハイブリッドは選べない。緊急自動ブレーキを作動できる安全装備は設計が古く、歩行者を検知できない。しかも装着されるのは3.5Lのみで、売れ筋の2.5Lでは選べない。

同じ日産が用意するミドルサイズミニバンのセレナに比べると、3列目の広さと居住性、荷室に変更した時の積載容量と使い勝手、安全装備の性能、ハイブリッドの設定まで、さまざまな機能で見劣りする。当然にアルファード&ヴェルファイアにも負けている。

しかも2列目のシートベルトは、セパレートタイプでも、ピラー(柱)から引き出す方式だ。セパレートタイプの2列目は、スライドやリクライニングの調節幅が大きいために背もたれから引き出して体にフィットさせるのが常識だが、エルグランドはそうなっていない。安全性にも不満がある。

今の日産では、商品開発と販売促進が海外中心になり、日本は冷遇されている。この象徴がエルグランドだ。

■ホンダオデッセイ

ホンダ・オデッセイ(現行型発売は2013年10月)

2018年上半期の1か月当たりの平均登録台数は1536台だ。エルグランドの2倍以上売れたが、アルファード&ヴェルファイアよりは圧倒的に少ない。

それでもオデッセイは床が低く、居住性や乗降性が良い。特に3列目は床と座面の間隔が適度で、足を投げ出すアルファード&ヴェルファイアよりも快適だ。安全装備のホンダセンシングは高機能で、ハイブリッドは動力性能が高く燃費も優れる。

つまり機能的にはアルファード&ヴェルファイアに太刀打ちできるが、売れ行きは低調だ。

その理由は3つある。まずオデッセイは全高が200mm以上も低いこと。クルマの全高は、必要な最低地上高と室内高が確保されれば、低いほどメリットが多い。安定性と乗り心地で有利になり、ボディが軽く空気抵抗も減るから、動力性能と燃費も向上させやすい。

従ってオデッセイの考え方は正しいが、ユーザーの共感を得られるとは限らない。Lサイズミニバンは価格が高いこともあって外観の見栄えが重視され、背の高さが求められる。着座位置を高めて、乗員の見晴らしを良くすることも売れ行きを増やすためには大切だ。

現行型のアルファード&ヴェルファイアはプラットフォームを刷新したから、床を低く抑えることもできた。それをしなかったのは、合理的な機能よりも「売れるクルマ造り」を優先したからだ。対するオデッセイは、ホンダの考える本来あるべきクルマ造りを追求したことで、売れ行きを低迷させた。

また今のホンダはN-BOXやフリードの販売に力が入り、オデッセイの販売力が欠乏していることも挙げられる。

次ページは : ■トヨタエスティマ

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