ヴェルファイア&アルファードがなぜ高級ミニバン市場で一強なのか

■トヨタエスティマ

トヨタ・エスティマ(現行型発売は2006年1月)

2018年上半期の1か月当たりの平均登録台数は855台だ。卵型の外観は独特で、今でも古さを感じないが、発売は2006年1月だから12年以上を経過した。

エスティマをベースに開発された先代アルファード&ヴェルファイアは、2015年に現行型へフルモデルチェンジされたが、エスティマは一新されていない。つまり現行型が最終型になる。

発売から12年を経ると古さが目立つ。走行安定性、乗り心地、少し窮屈な3列目シート、歩行者を検知できない緊急自動ブレーキなど、いずれも設計の新しいアルファード&ヴェルファイアに見劣りする。つまり選ぶ価値が薄れた。

■アルファード&ヴェルファイア人気の結論

人気の背景には、まず商品的な魅力がある。派手なフロントマスクを含めた存在感の強い外観、上質な内装、優れた居住性や積載性などだ。特に押し出し感の強さと、周囲を見降ろす運転姿勢は、ユーザーの内面に潜む優越感を刺激する。トヨタらしい周到な計算があり、人によっては激しい嫌悪感を抱くが、総じて売れ行きにはプラスに作用している。

これに加えてライバル車の魅力低迷がある。「一強他弱」といわれるが、明らかに「他弱」がアルファード&ヴェルファイアの売れ行きを押し上げた。Lサイズミニバンを選ぶ時は、消去法的な意味でも、必ずアルファード&ヴェルファイアに行き着く。同じトヨタ車では、古くなったエスティマからの乗り替えも多い。

またトヨタ車を含めてワゴンが大幅に減り、荷物を積みやすいクルマといえばミニバンになったことも影響した。かつてはトヨタにもクラウンワゴン、マークXブリット(後にマークXジオに変更)、アルテッツァジータ、アベンシスなどのワゴンがあったがすべて販売を終えた。

上級セダンも設計が全般的に古い。クラウンは新型になったが、マークXは発売から9年を経過した。カムリは北米指向が強く日本のセンスに合わない。これらの需要がアルファード&ヴェルファイアに流れた。

トヨペット店からは「TVのニュースなどで、政治家や芸能人がアルファードを使う様子が報道され、イメージが高まって人気を呼んだ」という声も聞かれる。「フォーマルなクルマはセダン」という固定概念に縛られなければ、アルファード&ヴェルファイアは広くて快適だ。

トヨタ・アルファード(写真左)とヴェルファイア(同右)。ライバルが古く、メディア露出が多いこと、それにやはり性能もいい

■最大の勝因は「日本ファースト」

そして根本的な理由として、アルファード&ヴェルファイアは、日本の顧客の好みを入念に研究して開発されている。新型クラウンは、走行性能からデザインまでメルセデスベンツのような欧州車風になったが、アルファードには、かつてのクラウンに通じる日本的な贅沢がある。光沢の強い木目調パネルやメッキパーツ、柔軟な乗り心地、ゆったりしたシートの座り心地まで、すべてが日本の好みと用途に合う。

セダンはサイズを問わず、北米向け、欧州向け、少数の日本向けと脈絡が取れないが、背の高いクルマは違う。

軽自動車で小型車を超える満足感が得られるホンダN-BOX、優れた実用性と新鮮味のある造形をバランスさせたトヨタシエンタ、健康的な家族の世界観を明るく表現する日産セレナ、成功した大人の贅沢を感じさせるアルファード&ヴェルファイアと、日本のさまざまなユーザーのライフスタイルや心情に合う。

つまりアルファード&ヴェルファイアが人気を得られたのは、これら一連の「日本ファースト」を代表する存在であるからだ。

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