セルシオ GT-Rだけじゃない!! 今あらためて実感する日本と世界を変えた日本車インフルエンサー列伝

■鈴木直也氏が推すインフルエンサー車

トヨタカムリ(3代目・1986年) …それまで特別なエンジンだったDOHCを高効率な一般向けとした「ハイメカツインカム」は当時、衝撃的だった。2L、直4の3S-FEが最初だった
トヨタカムリ(3代目・1986年) …それまで特別なエンジンだったDOHCを高効率な一般向けとした「ハイメカツインカム」は当時、衝撃的だった。2L、直4の3S-FEが最初だった

 半世紀くらい前、後発の日本車は技術もデザインも欧米のモノマネと揶揄されることが多かった。

 しかし、石の上にも半世紀。現在主流になっている自動車の技術には、ルーツが日本車という例がけっこうある。

 その最たるものはいうまでもなくハイブリッドパワーユニットだが、それを別にして日本車はもかなり幅広く世界に影響を及ぼしている。

 まず取り上げたいのは、トヨタが3代目カムリで導入した“ハイメカツインカム”。

 技術そのものは、以前からあるDOHC4バルブだが、当時は「スポーツカー用の高性能エンジン」と思われていたDOHC4バルブのポテンシャルを、燃費と排ガス浄化性能に振り向けたのがミソ。

 しかも、それを普通の乗用車に搭載し、価格プレミアムをつけずに「普通のエンジン」として量産した。

 いまでは、DOHC4バルブでないエンジンのほうが珍しくなったが、その大衆化のルーツは“ハイメカツインカム”だったのだ。

ホンダインテグラ(2代目・1989年) NAで1Lあたり100psというのは低回転を犠牲にしたレーシングエンジン、といった時代に、カムを切り替えることで低回転の扱いやすさも両立したVTEC
ホンダインテグラ(2代目・1989年) NAで1Lあたり100psというのは低回転を犠牲にしたレーシングエンジン、といった時代に、カムを切り替えることで低回転の扱いやすさも両立したVTEC

 普通のエンジンがDOHC4バルブになると、スポーツエンジンはもうひと工夫必要になる。そこで生まれてきたのが、ホンダVTECに代表される可変バルタイ技術だ。

 市販車デビューは1989年の2代目インテグラだったが、NAながらリッター100psを叩き出すレース仕様なみの高回転型エンジンが、若者にも手が届く価格で市販された反響は大きかった。

 その後、パフォーマンスだけではなく燃費や排ガス浄化性能の点でも、可変バルタイ技術は不可欠のものとなり、現在ではほぼすべてのエンジンに搭載されている。

 可変バルタイのおかげで普及が進んだ技術にミラーサイクル(アトキンソンサイクル)があるが、そのルーツはマツダのユーノス800だ。

 商業的には失敗に終わったが、「2L級の燃費で3L級の走り」を狙ったこの野心的なエンジンは、知られざる名機。後のSKYACTIVに通じる、マツダらしいユニークなトライだった。

 また、今やターボエンジンでは不可欠な気筒内直噴システムは、8代目ギャランの“GDI”がルーツ。いまや忘れられつつあるけれど、元祖直噴として記憶にとどめたい存在だと思う。

 その他、軽から小型車までで大きなシェアを誇るCVTはスバルジャスティが初めて実用化したミッション。

 最近欧州車で増えている後輪操舵(4WS)は、R31スカイラインのHICASが元祖など、駆動系や足回りでも日本車が世界に与えた影響は少なくない。

 これからくる電動化時代でも、ぜひ世界をリードしていってほしいものですね。

■清水草一氏が推すインフルエンサー車

ホンダCR-V(初代・1995年) CR-Vは乗用車をベースとしたクロスオーバーSUVという新ジャンルを確立し、デザイン的にも世界に影響を与えた
ホンダCR-V(初代・1995年) CR-Vは乗用車をベースとしたクロスオーバーSUVという新ジャンルを確立し、デザイン的にも世界に影響を与えた

 デザイン面で世界に影響を与えた国産車は、決して多くない。

 ことデザインに関しては、国産車は長年海外から影響を受ける側で、独創的なデザインも少なかった。

 軽トールワゴンや5ナンバーミニバンは世界に誇るジャパン・オリジナルだけど、ほぼ国内でしか売られていないし、海外にはこういうクルマの需要がナイ! セダンに関してはまったくゼロ。ステーションワゴンもナシ。

 日本のお家芸たる小型のハッチバック系も、デザイン面で世界に影響を与えたクルマがあるかっていうと、ほぼ思い浮かばない。

 日本車はデザイン以外の部分で勝負してきたからねぇ。デザインレベルそのものも、欧州に肩を並べたのは最近のことだ。

 ただ、SUV、特にクロスオーバーSUVに関しては、日本車は世界に先駆けたし、大いに影響も与えた。

 その元祖は初代CR-Vだ。前年にRAV4も出てるけど、デザイン的にはCR-V! SUVでありながら、シンプルでクリーンで都会的なデザインは、世界中でヒットした。

 ラグジュアリーな都会派SUVのパイオニアとして、メルセデスMクラスやX5に影響を与えたのは、初代ハリアー(北米名レクサスRX)だ。クロスオーバーSUVの元祖はハリアー! とも認識されている。

 デザイン的には、世界初の「まったく土の香りがしないSUV」と言える。CR-Vも土の香りは薄かったけど、ハリアーはさらに薄かった。

日産ジューク(2010年) 一見ヘッドライトに見えるエンジンフード部のランプはポジションランプで、丸いランプがヘッドライト。この手法は
日産ジューク(2010年) 一見ヘッドライトに見えるエンジンフード部のランプはポジションランプで、丸いランプがヘッドライト。この手法は

 そして初代ジューク。こっちはSUVのデザインとしてではなく、フロントフェイスの4つ目デザインが世界に影響を与えた。

 日本では売れなかったけど、海外では好調だったし、あのフロントフェイスは、デザインの専門家から「すばらしいオリジナリティ」と高く評価されて、多くのフォロワーを生んだ。

 シトロエンC3がその典型だ。自動車デザイン界の前衛派・シトロエンに影響を与えただけでもスゲエ!

 デュアリス(欧州名キャシュカイ)も、初めてSUVに本格的に空力デザインを取り入れたという意味で、多少影響を与えたんじゃないだろうか。

 最後に2代目キューブ。立方体のようなデザインが前衛的でクールだと欧州で評判に。

 販売されたのは3代目からで、しかも売れ行き不振だったけど、「見るからに空気抵抗の多そうな、遅そうなデザイン」は、世界の自動車デザイナーの脳裏に焼き付いた。

 いまだフォロワーは起亜ソウルだけだけど、いつか花開く可能性はあると見ている。

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