陸上貨物運送事業労働災害防止協会は、令和3年(2021年1月~12月)の陸運業における労働災害発生状況について、とりまとめを行なった。
死亡災害、死傷災害ともに前年比で増加した。特に死傷災害は荷役関連作業を中心に大幅な増加となった。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による外出自粛の影響で、宅配便などの取扱個数が増加していることも一因となっている。
令和3年は、5か年計画の「陸上貨物運送事業労働災害防止計画」(2018年度~2022年度)の4年目に当たり、最終年度となる本年(令和4年)の目標達成に向けて、非常に厳しい結果となった。
運送業ではトラックドライバーの人手不足や、物流の「2024年問題」など課題が山積しているが、職場の安全性確保は課題解決の前提となる。労災防止に向けて一層の取り組み強化が求められている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、図表・写真/陸上貨物運送事業労働災害防止協会・「フルロード」編集部
死亡・死傷災害ともに増加
労働災害防止団体法に基づき設置された特別民間法人である陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)は、令和3年における陸運業の労働災害発生状況についてのとりまとめを行なった。
前年比で死亡者数は8人増加の95人、死傷者数は917人増加の1万6732人(いずれも確定値)となっている。
死亡災害では「交通事故」が37人(前年比+4人)と死亡災害の中で最も多く発生しており、その割合は38.9%と突出している。
いっぽう、2年連続の増加となった死傷災害では、「墜落・転落」が4496人(前年比+181人)と死傷災害の中で最も多く発生。次いで「動作の反動、無理な動作」が2984人(前年比+250人)、「転倒」が2813人(前年比+209人)、「はさまれ・巻き込まれ」が1605人(前年比+16人)と続く。
死傷災害で上位を占めた事故の型は荷役関連作業に起因する災害であり、いずれも前年と比べて大幅な増加となった。
死傷災害の増加について陸災防では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による外出自粛等の影響により、宅配便取扱個数が増加していることが一つの要因になっていると分析している。
なお、新型コロナウイルス感染症へのり患による死傷災害は377人(前年比+231人)で、こちらも大幅な増加となった。
死亡者数は前年に過去最少を記録しているが、増加に転じた。事故の型としては4割弱を占める「交通事故」(道路上での労働災害)と「その他」が前年より大きく増えている。
近年はドライバーの高齢化等を背景に、高年齢者の労働災害が増加傾向にあり、その対策を講じる必要もある。
死傷災害は7割近くが荷役時に発生している。ロールボックスパレット(RBP、いわゆる「カゴ車」)やテールゲートリフターの取り扱い、ドライバーの職業病ともいわれる腰痛(「動作の反動・無理な動作」に分類される)対策などが急務となっている。
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