欧州車に「追いつき追い越せ」の精神で開発されてきた日本車は、今や海外の多くでも販売されるようになり、欧州車との価格も接近。より定番の欧州車とガチンコで競合するケースも増えてきた。2018年6月に発売された新型カローラスポーツとVWゴルフもまさにそのうちのひとつだ。
基本的に日本専用車のクラウンも、新型ではベンツ・BMWといった“老舗”を意識して開発されたことを感じる部分が多い。
また、悪路走破性で比べるなら世界最高峰のジムニーと欧州の本格クロカンの対決も面白い勝負となるはず。
日本で伝統を持つ名門車は、欧州の定番強豪車に下剋上を果たすことができるのか?
文:岡本幸一郎、国沢光宏
写真:編集部、Daimler
ベストカー 2018年10月10日号
【1】カローラVSゴルフ
[文/岡本幸一郎]
カテゴリーのベンチマークと評されるVWゴルフらしく、本当にそつなくよくまとまっている。室内空間や荷室は広く、質感も高く、走りの仕上がりも申し分ない。
そんなゴルフに負けじと開発されたことをヒシヒシと感じさせるのが新型カローラスポーツ(以下カローラ)だ。
まずデザインはカローラのほうがずっと凝ったことをやっているのが見て取れる。対するゴルフのデザインも、普遍性を極めた、どこから見てもゴルフであることをすでに確立した強みがある。
利便性について、カローラは前席重視の印象が強いのに対し、ゴルフは後席の乗降性や居住性や荷室の広さなど、すべてが合理的にできている。
ゴルフのなかでも上級のハイラインとそれ未満ではけっこう違うのだが、ハイラインは見た目も上質で、快適性が高く滑らかな走り味を身につけている。ことさら俊敏なわけでもなく、面白みに欠けるといえばそうかもしれないが、どこにも尖ったところはなく、何も気になることがない。
一方のカローラは日本車としてはいち早く、欧州車では当然のもどり制御を加えた電動パワステを採用した点は大いに評価したい。その甲斐あってステアリングフィールの仕上がりは上々だ。
ただし、俊敏性ではカローラが上回るが、ステアリングの正確性やしっかり感はゴルフが上。むしろリアのスタビリティがカローラのほうが高いように感じられる。
という感じで、部分的には上回った面もあるものの、全体で見ると総合力に長けるゴルフに軍配が上がるのは否めない。が、大健闘だ。
【2】ジムニーVSベンツGクラス
[文:国沢光宏]
新型ジムニーだけでなく、従来型ジムニーにも言えるコトながら、このクルマの凄さは悪路走破性である。世界中にジムニーのファンがいるほど。You Tubeでジムニーの悪路走行動画見るとわかるけれど、もはや驚くしかない! 皆さん普通じゃない。Gクラスで走破できるようなゲレンデなら、すべてジムニーも走破できると考えていいだろう。
むしろGクラスの優位な状況は少ないかもしれない。強いて言えば絶対的な背の高さを活かした川渡りくらいだろうか? それすらスノーケル付けたジムニーが、潜望鏡のように水面に付きだして(ボディまったく水没してる)走る動画もある。Gクラスが勝てる状況を探すも、中くらいの石が転がってるロックセクションくらいです(大きな石はジムニー得意)。
何よりジムニーの強さは圧倒的に軽い車重と、コンパクトなボディにある。Gクラスだと激しくスタックしたら重機を持ってこないと抜け出せないが、ジムニーなら人力で何とかなるケース多い。障害物の多いセクションだってコンパクトなボディなので容易に避けられます。
新型になって電子式のトラクションコントロールまで付いたため、標準スペックのままだって強力な走破性を持つ。
動力性能を必要とするスポーツモデルの場合、下克上はほとんどあり得ない。アルトワークスがサーキットやワインディングロードでポルシェ911に勝とうとしたって無理。
けれどジムニーなら“ほぼ”すべてのゲレンデでベンツGクラスに勝てるんだから凄いと思う。クルマ業界で下克上企画をやると、さまざまな車種が出てくるけれどジムニーほど強いアイテムなし!
今回はデザインをパクった(と言われる)Gクラスと比較したけれど、相手がジープだろうがランクルだろうがレンジローバーだろうが、すべて悪路じゃジムニーの勝ちだ。
同じくらい強いヤツをもってこいとなると、それこそ6輪駆動車とかクローラー履いた、普通の道を走るのが辛くなるようなジャンルのクルマしかなくなります。ジムニーは世界最強の4輪車だと思う。
【3】クラウンVSベンツEクラス
[文:岡本幸一郎]
かたやトヨタブランドの実質的フラッグシップ、かたやメルセデスの中堅モデルと立ち位置は異なれど、同じ欧州Eセグメントの高級セダンとして、かねてからなにかと比較されることの多かった2台。
かつては大差がついていたように思うが、代を重ねるごとに差は縮まり、TNGAプラットフォームを得た新型ではクラウンがハード面ではほぼ追いついたような印象を受けるほどまでになった。
ボディ剛性感が高く、操舵に対する応答遅れのない感覚や、一体感のある走りはEクラスにひけをとらないものだ。さすがはニュルブルクリンクで納得いくまで走りを鍛えた、というだけのことはある。
パワートレーンについては、Eクラスのほうがはるかにワイドバリエーションであることはご存知のとおりだが、そのなかで同じガソリン2Lターボ同士を比べると、従来型ではパワフルさやスムーズさでEクラスが圧倒的に上回っていたところ、現行型は差がぐっと縮まった。
EクラスにもPHEVはあるが、クラウンはトヨタの強みを活かして本格的ハイブリッドを2種類用意したのもたいしたものだ。そこは大きなアドバンテージといえる。
先進安全運転支援システムについては、お互い機能的には世界最先端をいっていることには違いないものの、車線を維持するためのステアリング制御が滑らかなことや、レーンチェンジをアシストしてくれる点ではEクラスが上回る。一方のクラウンにはコネクティッドという武器がある。そこはトヨタが一歩リードしている。
デザインについて、クラウンは若返りを図るべく大胆に変身したのは見てのとおり。一方、過去3世代でいろいろ新しいことにチャレンジしてきた経緯のあるEクラスは、現行モデルではレトロモダンという手法を採った。流麗な外観はもちろんだが、とりわけ妖艶なインテリアが印象深い。むろんクラウンもそれなりに高級感はあるが、そうした官能的な領域まで達していないのは否めない。
ところが不思議なことに、このクルマでないと得られない世界観をどちらが持ち合わせているかというと、それはクラウンではないかと思う。
確かにEクラスも、メルセデスらしさとスペシャルティな雰囲気を全身で巧く表現していることには違いない。メルセデスという強力なブランド力もある。しかし、なぜかあえてEクラスを選ぶ理由らしきものが薄れたような気がしてしまうのだ。
その点でクラウンにはオンリーワンの存在感がある。このクルマにしかない世界観を感じさせるのは、クラウンのほうだ。