■「シンプルな気持ちよさ重視」で犠牲にしたもの
では、どんな場面でも万能かと言うと、やはりそんなことはないだろう。特徴的な「しなやかによく動くハンドリング」性能はそれこそ駐車場のような極低速からワインディングでの普通の運転領域で発揮されるよう。合わせ込みされている印象だった。
その背反として高速域にしわ寄せがくる。CX-60では未確認だが、例えばCX-30やマツダ3では時速100kmを超えると外乱に対し、フワフワして落ち着きが不足していた。サーキット走行ではいわゆるスポーティな走り味とは違った。CX-60でも同じ傾向になることが予測され、実際に限界域ではリアの踏ん張りがやや物足りない印象だった。
メーターディスプレイ表示で触れたような「本当に必要なモノのみ残したシンプルなよさ」は、世間一般の「盛りだくさんのお得感」とは反対を向いている。この点は「玄人好み」とも言えるだろう。
■今のマツダの人馬一体とは「クルマと一体になれるシンプルな気持ちよさ」
クルマの本質的なよさを追求するCX-60は、求道者のような存在だ。その孤高さはもしかしたら多くの人には理解されないかもしれない。しかし、身体拡張コンセプトは自らの身体を研ぎ澄ませたアスリートには響くものがあるだろう。引き算の美学はアーティストやデザイナーの琴線に触れると確信する。
しかし、何よりも「細かい蘊蓄よりも、人馬一体な運転をシンプルに楽しみたい」というドライビング愛好家には必ずや満足してもらえるだろう。「クルマと一体になって駆け抜ける喜び」を、このクルマは普段の日常の運転で味わえるのだ。
「アフォーダブルなスポーツカー」であるロードスターの乗り味が、より人も荷物も載せられる利便性の高いSUVで味わえるのだ。「ドライビングエンタテインメント」、その謳い文句そのままに。
著者/ハル中田(国内海外の開発事情にも詳しいプロドライバー兼エンジニア。レース経験や人間工学も踏まえたコックピットまわりのデザインと走りの評価に一家言あり。サスペンションやタイヤに詳しく、ドイツのニュルブルクリンクを走るのが三度の飯より好きだという)
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