トヨタ スバルを超えた!! 衝突軽減ブレーキに「革命」を起こしたモービルアイ社とは?


自動車の安全性能について評価・発表を行うJNCAP(自動車アセスメント)については、読者のみなさんもご存じのはず。

2017年5月、そのJNCAPの2016年度の歩行者対応自動ブレーキ試験の結果が発表され、自動車ギョーカイはちょっとした騒ぎとなった。

高度なシステムを搭載し、前年度の上位を独占したスバル(ステレオカメラ)、トヨタ(単眼カメラ+ミリ波レーダー)勢を抑えて、なんとたったひとつのモノクロカメラだけで空間認識を行うクルマが1位(日産セレナ)、2位(マツダアクセラ)に輝いてしまったのだ。

実をいうと、この2台が搭載する自動ブレーキの基幹システムは同じ。その基幹システムの開発元こそが、今回紹介するモービルアイなのだ。

※本稿は2018年7月のものです
文:ベストカー編集部/写真:モービルアイ社、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年8月10日号


■モノクロカメラで先行車との距離を測る?

モービルアイという会社が生まれたのは1999年のこと。IT技術者だったアムノン・シャシュア氏と起業家のジブ・アビラム氏が自動車の安全性能に変革を起こすべく、イスラエルのエルサレムで創業した。ちなみにモービルアイの本社はオランダのアムステルダムにあるが、これは法人税対策で、開発拠点はあくまでイスラエルだ。

創業するやいなや、モービルアイは日本や欧米の自動車メーカーと協力し、クルマの走行データ収集を始める。集まった膨大なデータをもとに、自動車の安全性を向上させるデバイスの開発を始めたわけだが、モービルアイはなんと、それをたったひとつのモノクロカメラで実現しようとしたのだ。

2008年にモービルアイが初めて発表した運転支援システム「EyeQ1」。BMW7シリーズが世界で初搭載した

しかし不思議だ。昔、理科の授業で「奥ゆきがわかるのは両目の視差のおかげ」と習った。だからスバルのアイサイトだってカメラはふたつ。なんで単眼カメラで先行車までの距離がわかるのだろうか。

モービルアイは、遠近法の原理を用いているという。

風景のなかで、道路など平行なものは必ず1点で交わるが(この点を消失点という)、道路上にある物体は、近くにあるほど、この消失点よりも下にずれて見える。

モービルアイの単眼カメラは、この「消失点からどれだけ下にずれているか」を監視することで、先行車との距離を測っている。さらにその画像を1フレームずつ比較することで、「先行車が近づいているか、遠ざかっているか」まで判断できるという仕組みだ。

■自動ブレーキ普及の立役者 自動運転へも進出

モービルアイ初の運転支援システム「Eye Q1」が完成したのは2008年のこと。このシステムはBMWの7シリーズに初搭載されたが、当時はまだブレーキ制御までは行えず、制限速度警告やハイビームの自動切り替え、車線逸脱警報といったドライバー支援にとどまった。

しかし、2010年には第2世代となる「Eye Q2」を発表。ここでは単眼カメラだけを用いた車両衝突予測や歩行者の視認も可能になり、各社の衝突軽減ブレーキと組み合わされて、画期的な安全運転デバイスへと進化した。

さらに、2014年に登場した「Eye Q3」からは、いよいよ自動運転を見据えたプラットフォームへと発展。データ量が膨大になりがちな3次元地図の情報を効率よく処理するREM(ロード・エクスペリエンス・マネジメント)といった新機能を盛り込み、各社がしのぎを削る自動運転という戦場へと参戦することになった。

最新チップ「EyeQ4」を世界初搭載したのは、フォーミュラE参戦でも知られる中国の自動車メーカーNIOのES8

進化ばかりではない。この頃になると1世代前のQ2が量産効果で安くなり、高級車のみならずミニバンやコンパクトカーといった量産モデルにも採用されるようになった。

もともと単眼カメラを使ったモービルアイのユニットは構造がシンプルなうえ、ミリ波レーダーや赤外線レーザーといったカメラ以外のセンサーとの連携が容易なことも、自動車メーカーから支持を集めた。こうした歴史の積み重ねが、冒頭で述べたような日産、マツダの快挙につながったわけだ。

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