10年前とは月とスッポン!? 進化しすぎた緊急自動ブレーキ 中身は別物になっていた!!

 今や当たり前の装備となった、いわゆる自動ブレーキ。作動条件に当てはまれば、車側がブレーキをかけ、衝突を回避したり、その被害を軽減できるだけあって各社こぞって新車に装着している。

 その自動ブレーキの代表例として広く知られるスバルの「アイサイト」は、ちょうど10年前の2008年に実用化され、それ以降、爆発的に普及が進んだ。 

 ただ、違和感があるのは、どのようなシステムでも“自動ブレーキ”と一括りに表現されがちな点だ。事実、使っているセンサーによって歩行者に対応していないモノもあり、作動する車速も大違い。

 ひと口に自動ブレーキと言っても、“月とスッポン”なのだ。

文:渡辺陽一郎
写真:SUBARU、DAIHATSU、HONDA、TOYOTA


10年前に実用化されたスバルのアイサイト

2008年にアウトバック 2.5XTで実用化されたアイサイト。その後、進化を遂げ、現在の「バージョン3」ではカメラをカラー化。検知性能や衝突回避の相対速度などは実用化当初のシステムと比べて大幅に進化している

 日本で最初に緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を採用したのは、2003年6月に発売された4代目ホンダインスパイアだった。

 ミリ波レーダーが先行車に追突する危険を検知すると警報を発し、さらに接近するとシートベルトを巻き取って軽いブレーキングを行う。衝突不可避の状況になると、強くブレーキングするというシステムだ。

 フロントウインドウ上部にはカメラも装着され、車線逸脱の警報も行う。この時にはパワーステアリングも制御され、車線を正しく走れるように支援した。

 安全装備と併せて、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも採用している。いずれの機能も「アバンツァーレ」と呼ばれるグレードに標準装着され、発売時点の価格(消費税抜き)は350万円であった。サイド&カーテンエアバッグ、プレミアムサウンドシステムなども標準装着され、「30TL」の295万円を55万円上まわる。

 2003年2月発売の2代目トヨタハリアーも、ミリ波レーダー方式のプリクラッシュセーフティシステムを装着したが、緊急自動ブレーキを作動させる機能はない。それでも警報を発してシートベルトを巻き取り、急制動に備えて素早くブレーキアシストが作動した。

 緊急自動ブレーキは、この段階ではあまり注目されなかったが、2008年にスバルがアイサイトを実用化して、2010年にはアイサイトが「バージョン2」に進化する。

 このシステムが5代目スバルレガシィに搭載されると、一躍人気を呼んだ。システム価格が約10万円と大幅に安くなり、「ぶつからないクルマ?」という機能を分かりやすく解説したCMも話題になったからだ。

 車にとって一番の欠点は交通事故だから、常に最先端の安全装備を装着したい。それでも実際の売れ行きには、安全装備の価格や宣伝効果も影響する。アイサイトバージョン2は、この戦略が巧みであった。

 2012年には5代目ダイハツ ムーヴが、軽自動車で初めて緊急自動ブレーキを採用。これが最初のスマートアシストだが、赤外線レーザー方式の簡易型だから歩行者を検知できない。車両のみが対象で、作動速度上限も30km/hと低かった。それでも軽自動車とあって、装着車の販売台数は多かった。

“センサー”の違いで歩行者に対応できないタイプも

例えばダイハツの「スマートアシスト」は当初、赤外線レーザーをセンサーに使い、作動車速30km/h以下だったが、最新型のスマアシIIIではステレオカメラ方式に。作動車速も80km/h以下と大幅向上するなど、同じ“自動ブレーキ”でも性能は大きく異なる

 この時代から、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備の関心が高まり、装着比率も急速に上昇した。車を堅調に売るには、緊急自動ブレーキの搭載が不可欠とされ、各メーカーとも売れ筋車種には必ず装着するようになっている。高人気に押されて技術的な進化も促進され、性能は一層高まった。

 緊急自動ブレーキが対象物を検知するセンサーは、大きく分けると【1】赤外線レーザー/【2】ミリ波レーダー/【3】カメラの3種類になる。

 このうち、赤外線レーザーとミリ波レーダーは、対象物の反射を利用して検知するから、一般的には歩行者や自転車には対応できない。車両専用とされる(ただしフォルクスワーゲンなどは、歩行者対応型のミリ波レーダーを実用化した)。

 また、赤外線レーザーは前述のように作動速度が低く、歩行者も検知できないから、今では単体で装着する車種が減ってきた。赤外線レーザーとミリ波レーダーには、歩行者や路上の白線を検知するため、単眼カメラを組み合わせることが多い。

 一方、日産は1個のカメラセンサーだけで、車両や歩行者の検知、運転支援技術に含まれる車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、操舵の支援まで幅広く行う。

 スバルのアイサイトは、2個のカメラを使う。日産、スバルともに赤外線レーザーとミリ波レーダーは装着していない。

 つまり、今の日本車のセンサーは「赤外線レーザーあるいはミリ波レーダー+単眼カメラ」の複合型と、「単眼カメラのみ」、「2個のカメラ」という分類になる。

軽自動車は6年間で「作動速度」の上限が大幅アップ

単眼カメラとミリ波レーダーを併用するN-BOXの「ホンダ センシング」。当初、軽の自動ブレーキは作動車速30km/h以下のタイプが主流だったが、それと比べると“別物”といえるほどの進化を遂げている

 性能を個別に見ると、まずはシステムが作動する前提となる自車の走行速度が挙げられる。軽自動車が多く採用した赤外線レーザーは、対象物を検知できる距離が短く、作動速度の上限も各社とも前述の30km/hだった。歩行者は対象外だ。

 それが今の単眼カメラと赤外線レーザーを組み合わせるタイプでは、ダイハツの作動上限速度は、車両が80km/hで歩行者が50km/h、スズキは同100km/h・60km/hに高まった。

 同じ軽自動車でも、ホンダ N-BOXは単眼カメラに上級のミリ波レーダーを組み合わせるから、車両・歩行者ともに作動速度の上限は100km/hとしている。

 つまり、軽自動車の緊急自動ブレーキは、わずか6年ほどの間に、作動速度の上限が車両に関しては30km/hから80km/hあるいは100km/hに向上している。カメラの併用により、歩行者の検知も可能になった。この進化はきわめて大きい。

 小型/普通車については、少なくとも車両に対しては、100km/h(あるいはそれ以上)を作動上限にするタイプが増えた。

 ただし日産の単眼カメラ方式、トヨタの単眼カメラ+赤外線レーザー方式は、作動上限が80km/hにとどまるから注意したい。

同じ車種でも改良前後で緊急自動ブレーキ性能は違う!

現行型ハリアーは当初、ミリ波レーダー方式の緊急自動ブレーキを採用していたが、2017年の改良でミリ波レーダーと単眼カメラを併用する「トヨタ セーフティセンス」を搭載。このように、同じ車種でも自動ブレーキ性能が改良前後で進化しているケースもある

 また、トヨタの単眼カメラ+赤外線レーザー方式は、過渡期の段階にあり、歩行者対応が車種によって分かれる。

 改良を受けていない車種では、歩行者に対応できない。このタイプの単眼カメラは、車線逸脱警報の車線検知などに使われる。同じトヨタセーフティセンス(現在はCとPの区分も廃止)でも性能が違う。

 また、自動車事故対策機構が実施する予防安全性能アセスメントの結果を見ると、例えば現行ハリアーの前期型は、停車する車両に対する追突防止テストで、走行速度(相対速度差)が30km/hでも自動ブレーキを作動させながら追突した。これが2017年の改良後は、50km/hでも追突を回避している。

 このように緊急自動ブレーキを作動できる安全装備は、目下のところ日進月歩で、車種による性能の格差も大きい。今のところ緊急自動ブレーキには明確な基準もなく、性能の実態が分かりにくくなっている。

 従って危険回避性能にこだわるのであれば、緊急自動ブレーキの性能を高めた設計の新しい車種を選ぶと良い。面倒だが、各車のウェブサイトの安全装備に関する記述を読むと、細かな文字で作動上限速度とか、歩行者への対応が記載されている。

 また各車種のプレスリリース(メーカーの報道発表資料)にも、安全装備の進化があれば記載される。今は同じメーカーでも、車種の新旧などによって緊急自動ブレーキの性能に差があるので、細かく確認したい。

 それでも総じて設計の新しい車種は緊急自動ブレーキの性能が優れており、以前とは違う新型車を買う新たなメリットになっている。

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