ガスエンジンの特徴
なお、ガソリンと同じ石油由来のLPガスや、石油と同じ炭化水素化合物で炭素が1価のメタン(CH4)を主成分とする天然ガスはガソリンに近い特徴を持ち、専用の燃料供給装置を伴ってガソリンエンジンと同じ火花点火エンジンの燃料に使用できる。
ガス燃料は液体のガソリンと違って蒸発する際の冷却効果(気化潜熱)を持たない。また、燃料や燃焼生成物による潤滑作用もないことから、ガスエンジンはバルブシート(吸排気弁が閉じた状態でシリンダーヘッドと接触する部分)の摩耗が早く進むことが指摘されている。
現在トラックに使われている天然ガスエンジンの多くはディーゼルエンジンを改造したものだが、天然ガスはディーゼルよりも燃焼温度域が高く、排気ポート〜ターボチャージャーのタービン側など高い熱負荷が掛かる部分を守るために出力を制限する場合がある。
いっぽう、ここにきてボルボのG13型のように、ディーゼルエンジンの躯体を使い、圧縮点火させた少量の軽油を呼び火として天然ガスに着火させるユニットも実用化されている。
トラックがディーゼルエンジンの理由
ガソリンエンジンの場合、プラグの周辺で始まる燃焼が不整着火なしにスムーズに燃え広がるには寸法的な限界があり、燃焼室の大きさ、すなわち1気筒あたりの排気量が限られる。このためガソリンエンジンの大排気量化には多気筒化が必須となるが、構造が複雑化し、コストも上昇するため、商用車には向かない。
いっぽう、拡散燃焼のディーゼルには、燃焼室の大きさに対する制約がないため、大型車はもちろん、船舶用といった大排気量エンジンにも適合する。
ディーゼルは吸入気を圧縮加熱するためガソリンエンジンよりも高い圧縮比を必要とするが、圧縮比が高ければ膨張比(燃焼室の容積がピストンの下降によってどれがけ大きくなるか)も高まる。膨張比が高いと燃焼のエネルギーがピストンに「より有効に」伝えられ、同じ熱量に対してより高いトルク(出力)を発生することになる。
ただし、エンジン各部は高い圧縮比と出力に対応する剛性が求められるため、同クラスのガソリンエンジンよりも重量がかさむ。機械損失も大きく、高回転での運転は苦手だ。
このほか、燃料が持つ「体積あたり」の発熱量は、軽油のほうがガソリンよりも5%ほど大きい。よって同じ量を燃やした場合、軽油のほうがより強い燃焼エネルギーをもたらす。ただし、比重はガソリンのほうが小さいので、「重量あたり」の発熱量では両者の関係は逆転する。
これらのポイントが、ディーゼルエンジンの特長である「トルクが強く燃費に優れていること」の基本的な理由だ。
さらに、ガソリンエンジンの負荷調整には一定の混合比を保つために燃料量と吸入空気量をコントロールする「スロットルバルブ」が必要になる。負荷が低い状態ではこれが大きく絞られて吸気抵抗が高まる(ポンピングロス)。
いっぽう、ディーゼルの燃焼は許容する混合比(空燃比)の幅が大きく、負荷調整は燃料噴射量だけで行なえる。このため吸気絞りは不要で、スロットルによる損失がない。これもディーゼルの燃費がガソリンに差をつける要因の1つになっている。
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