■和のおもてなし感覚で作られた本格ドイツ車の味
しかし、その手の欧州車コンプレックスを抱えた人にしてみると、今回の和テイストで作られた新型CX-60は出色の出来だ。
スタイルは一見BMW X3にソックリだが、Aピラーが微妙に後ろに下がり、ノーズが伸びててよりFRっぽくて美しい。そのぶん、リアシートは広くないが、大きすぎない日本人には問題ない。
ドア自体の厚みや出っ張りも抑えられているし、開閉自体もドイツ車ほど重くない。さらに決定的なのはかつてない内装クオリティだ。
グレードにもよるが、1番の売れ線であるリーズナブルでパワフルな3.3L直6ディーゼルターボ搭載のXD(クロスディー)がまず凄い。323万円から始まるリーズナブルな価格設定で、ほぼ400万円のLパッケージから本革シートやソフトな樹脂内装が味わえる。
さらに凄いのが直6ディーゼルターボ+マイルドハイブリッドのXDハイブリッドだ。こちらはスタート価格500万円超えとマツダにしては高いが、ドイツプレミアムと比べると200万円以上も安いし、なかでも547万円で買えるプレミアムスポーツとプレミアムモダンのふたつの上級グレードが凄い。
プレミアムスポーツは毛足の長いスウェード素材をふんだんに使った上質シートを備え、マセラティや4シーターフェラーリに乗っているかのよう。
かたやプレミアムモダンは、ホワイト本革シートにかけ縫いという和の手法を使ったインパネと繊細かつ上質なメープルウッドパネルが美しい。特にモダンのほうはドイツ車はもちろん、ほかのどんな高級車でも味わえないオリエンタルなリッチテイストだ。
さらに走り味だ。CX-60はプロトタイプをサーキットで走らせただけだが、3.3L直6ディーゼルは吹け上がりが軽く、なおかつ重厚感もある。
エンジン単体のパワー&トルクは231ps&500Nmと欧州プレミアムに多少及ばないが、そのぶん国内では排ガス浄化システムに尿素を使わなくてすむし、ディーゼルエンジンならではの重厚なパワフルさをたっぷり味わえる。
もうひとつ嬉しいのは新作FRプラットフォームならではのナチュラルなハンドリングだ。例えばメルセデスベンツ、BMWはハイスピード重視なあまり、真っ直ぐでは列車のレールにハマったような磐石さを見せる。実際、時速250kmでアウトバーンを走るなら「これっきゃない」とは思う。
だが、日本では飛ばせてもせいぜい時速100kmを超えるくらい。その点、CX-60のハンドリングはサイズの大きいマツダロードスターだ。直進時の手応えはしっかりしていて飛ばしても怖くない。しかし、それと同時にドイツ車にはないヒラヒラ感もある。高速からワインディングまで広い範囲で楽しめるのだ。
ここにはロードスターから導入されたKPC(キネティック・ポスチャー・コントロール)が効いている。これは自然なサスペンション幾何学を使ったもので、イン側にブレーキを強めにかけることでコーナリング中のイン側の浮き上がりを抑えることができる。
要は硬いアンチロールバーや機械式LSDを使わずともコーナリング時に地を這うような接地感が得られるわけだ。ここの自然な走りのテイストは、ぶっちゃけドイツ車を超えている。
■ぶっちゃけ「プアマンズドイツ風SUV」ですがな!?
まさに重厚かつ威厳たっぷりのドイツ車に、ほどよく日本人の繊細さをまぶしたような出来映え。これが気にならない欧州車好き日本人はおそらくいないだろう。
同時にCX-60は中身を考えると絶対安い、っていうか安すぎる。全体のスタートプライスは2.5Lガソリン4気筒モデルだが、300万円を切り、前述したようにCX-60の白眉たる直6ディーゼルターボモデルが323万円から。
本革仕様でも400万円スタートだし、マジメな話で同等のドイツ車を買うとなると700万円は楽勝で払うことになる。
正直、今どき「プアマンズドイツ車」「リーズナブル欧州車」などという前時代的なセールストークやキャッチフレーズは流行らないし、マツダもそんなカッコ悪いことは絶対に言わない。
だが、ナチュラルなハンドリングを実現するFRプラットフォームへのこだわり、ノーズのしっかりしたSUVデザインへのこだわり、直6エンジンへのこだわりを考えると、欧州的、ドイツ車的というのが一番わかりやすい。
そして、その欧州フォーマットに則っているクルマのわりに安いのもホント。
つくづく出来のいい和のプアマンズドイツ車、リーズナブル欧州車なのですよCX-60は。
【画像ギャラリー】重厚な欧州車と扱いやすい日本車の良いトコ取り!! 和製ヨーロピアンSUVマツダ CX-60(10枚)画像ギャラリー
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